第8話三河出兵 

天文12年 那古屋城


尾張を一応は平定した信秀は三河を平定するために一万の軍勢を率いて出陣した。


「ここは一気に三河を手中に収める。まずは岡崎の松平の若造を蹴散らしてくれようぞ!」


「「うぉぉ!」」


織田軍は那古屋城から速やかに安祥城に進みそこから三河を席巻した。すると三河国衆たちは今川・松平から次々に離反した。その中には松平一門の桜井松平家 松平信定、佐々木松平当主 松平信次、忠倫兄弟 重臣酒井将監など一門や重臣も離反し、松平広忠は窮地に陥る。


なぜここまで多くの者が織田に寝返ったかと言うと、三河に侵攻する4年前天文7年から与五郎とその一族並河家は関係の深い津島・熱田の商人や三河商人たちの協力を取り付け三河国衆たちに調略を行っていた。


初めは安祥城周辺に根付く地侍や土豪ぐらいしか靡く事はなかったが、昨年の小豆坂での戦いでの織田の勝利や、駿河国河東でも今川と北条の衝突が激化したことでの今川からの三河に対する影響が低下したことで、今川とそれに擁立された松平広忠に不満を持つ者たちや松平家が生き残るには織田につくほうが良いと考える者たちが離反したのである。

織田軍は三河国衆が寝返ったことで一万五千にまで増えた。


「ハッハッハ、与五郎良うやってくれた。お主のおかげで三河の半分が簡単に手に入った上に岡崎をまるっと包囲できた。これならば三河を完全に抑えることができる」

信秀は上機嫌に包囲する岡崎城を見ながら与五郎や平手政秀に語った。


その信秀の様子に与五郎は、

「しかし殿、ここはまだ油断できません。今川は河東で北条と争っているとはいえ、三河今川方の国衆は抵抗し、また遠江の今川勢が攻めてくるかもしれません!」


それに対して政秀が答える。

「大丈夫じゃ与五郎。裏で動いていたのはお主だけだと思うか?儂も遠江で少しばかり動いておったわ。少し待てば時期にわかる」


与五郎は少し驚いた表情になる。与五郎は自分の調略や戦でそこまで周りを見れていなかった。


「そういうことだ与五郎。そしてそろそろお主に暴れて貰おうか。柴田、丹羽、佐久間を連れて行き東三河を平定してまいれ!!」

「ははっ!この並河与五郎則房におまかせください!」


そう言って与五郎は勢い良く本陣を出る。それを見ていた信秀と平手政秀は笑いながら言った。


「あやつは優秀だが、まだ若く伸び代も多くあるこれからが楽しいじゃ」

「そうでございますね」

「あいつには儂だけではなく、吉法師も支えて貰わなければな」


△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△

織田の本陣を出た与五郎は自身と同じ若手の柴田権六勝家と佐久間半介信盛、また織田の直接の家臣ではないが斯波家から与力として付けられた老将丹羽長政、またこちらに寝返った三河国衆と合流した。


「いざ出陣!」

今川家臣 鵜殿長持が篭もる上ノ郷城に出陣した与五郎率いる織田軍別働隊四千。その報を聴いた渥美半島を治める戸田宣成は今川方の牛窪城を攻撃した。


その報を聴いた与五郎は怪訝そうな顔をする。それを見た権六はそれが少し気になったようで、

「与五郎、どうしたんじゃそんな顔をして?なんか問題でもおきたか?」と尋ねる。

「いや、問題ではないが、戸田がこちらに寝返った事は良いが、真っ先に牛窪の牧野を攻撃したことが少し厄介だなと思っただけだ。その理由はわからなくもないがな」


元々戸田宣成は今川方の三河国衆で、今川の後ろ盾のもと渥美半島を実質支配していた。渥美半島は古代より貿易の要所であり商業が発展していた。その富を背景に勢力を拡大。


そしてある時東三河の吉田城を支配する。その城は元々牧野氏の物であった。それがきっかけで東三河での戸田と牧野の抗争が勃発、そこに今川が仲裁に入った。しかし


戸田の拡大を警戒した今川が牧野に味方し、吉田城はなんとか守ったが牧野から奪った所領の多くは牧野に返還せざる負えなかった。


それを恨んだ宣成は表向きは今川に従いつつ、与五郎の調略でかなり前から織田に通じていた。そこで織田が三河に攻め込み、上ノ郷に迫ったらそこで織田に寝返り、舟で上ノ郷を攻め織田軍と共に挟撃する計画であったが、それに反して宣成は牧野氏を攻撃したことで計画は狂い、そのことで与五郎は厄介なことになったと思った。


「丹羽殿、半介、権六。ここは我らは計画通り上ノ郷の鵜殿長持を討つ!それで良いか」

「異存なし」

「与五郎がそう言うのであれば」

「儂も異存なしじゃ。そして与五郎!儂を上ノ郷攻めの先鋒にしてくれ!この猛将 柴田権六勝家が落として見せようぞ!」


それに与五郎は

「皆の賛同、ありがたい。そして権六、望みどおり先鋒を任させる。あと話の腰を折るが、猛将は自分のことを猛将とは言わん!」と答える。


そして上ノ郷城を攻めるにあたって作戦を話し合いを行った。


「…という形で攻める。おのおの方抜かりなく」



















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戦国異聞三代記 @Hiryu11

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