軍師とは、戦場という盤面を支配する存在。
しかし、本作の主人公・耀秀は少し違います。彼は決して万能の天才ではなく、穏やかで、時に悩み、そして仲間を深く信頼する一人の少年です。
彼一人では、物語は動きません。
無双の武を誇る親友・龍清の槍。荒々しいながらも頼れる野盗の頭目・凱鬼の圧倒的な力。そして彼を献身的に支える龍朱鈴の存在。
耀秀の知略が「仲間」という最強の武器を得て、初めて戦場で牙を剥くのです。そのカタルシスが、この物語の大きな魅力だと感じました。
机上の知識が、血と硝煙の匂いがする現実の戦場で試され、磨かれていく様子には、まさに「最高の頭脳」が覚醒する瞬間を見るような興奮を覚えました。
デビュー戦で海を真っ赤に染め上げた「鳳凰」の誕生シーンは、圧巻の一言です。
これは単なる英雄譚ではありません。一人の地味な天才が、仲間との絆を力に変え、巨大な歴史の歯車を動かしていく、重厚な人間ドラマであり、最高の知略戦記です。