神奈川戦記オンライン~スロウスタートくんは、不遇アビリティ〈鈍速〉持ちのキャラを救いたい!!~
ゆめみじ18
『〈鈍速〉は弱い』の時代が終わる。
西暦2035年07月10日。
さて、始まりはこうつづろうか。主人公の男性は神に願っていた。
「世の中〈スピード〉と〈パワー〉があるキャラが最強!な奴らが多すぎる! 〈鈍速〉キャラに救いの手を!! おぉ~救いの手を!!」
では、どうしてこのような思考に至ったか。出来る限り説明していこう……。
◆
主人公、平穏一歩(へいおんいっぽ)/スロウは、ゲームで負け続けていた。
「か、……勝てない。何故だ、何故【スピードが遅いキャラで勝てない……】」
「だって今の時代〈スピード〉と〈パワー〉じゃん! 今の環境じゃ勝てないって!」
「遅いキャラって、たいがい防御が固くて倒しずらいうえに。ネチネチと毒で弱らせるか、硬さを生かして回復し続けるしか脳が無いじゃん?」
「はっきり言って【害悪キャラ】を使うんじゃねーよ! 邪魔なんだよ! 弱いクセに倒すのに時間ばっか食うし!」
スロウは悔しいので食ってかかる。
「でも、長い演唱呪文とかにロマンとか感じない!? 後手必殺のほうがカッコよくない!? 起死回生とか決まった時にはスカッとするじゃん!」
「この世は〈素早さ〉こそ命なんだよ! でも、ほらあるじゃん。遅いキャラも技を使って〈速度逆転〉させて頭から殴る奴とかさ!」
「めめっちいよな! 正々堂々と戦えってんだよ!」
スロウはお気に入りのゲーム内の老人キャラを引き合いに出す。
「でも、この老人キャラとかめっちゃいい味出してるじゃん。歴戦の勇者って感じで」
「老害」
「害悪」
「時代遅れ」
スロウはもうどうして良いかわからない。「そんなー!」とうなだれる。
「そ、そんなあ~……! この! この渋さが解らないなんて……」
「じじ臭い」
「流行んねーよそんなの!」
「じゃあ! 遅いキャラはこの先どうやって戦えば良いんだよ! 【後手】のキャラはどうやって勝てばいいんだよ!?」
とその時、データマンな同級生がメガネをクイっとしてから結論を言う。
「少なくとも今のゲーム環境では〈鈍速〉のキャラクターは勝てません。何故なら皆、もっと速く! もっと強くを求め続けて来た。結果、《俺ツエエいこーるレベルやランクが高いキャラが勝つ上に大人気》というのが定着しています。従って……!」
「やめろ! それ以上言うな!」
「《鈍速》キャラは理論上勝てません! 少なくとも現環境下では!!」
ががーん! と効果音が成る。あまりにも無慈悲、現環境下では〈鈍速〉キャラは勝てないのである。純粋なる〈遅さを生かして勝つ〉論法が確立していないのである。だから後手は弱い、このゲームでは弱い。
好きなキャラで勝ちたいのに、その方法論が確立されていない。特性も、技も。確立していないのだ。それがこの時代。つまり、老人には厳しい世界……。それが現実、あまりにも理不尽ではなかろうか。
「車でも持って来れば? ジジイ臭く大人のおもちゃを使ってさ」
「それこそ卑怯だよな~、俺達の土俵で戦えって―の」
「臆病なんじゃね? 無駄に年食って、大人の金の力で頑張った証で勝つ! それが大人!!」
「鈍速は害悪、はっきりわかんだね」
「てわけでお前〈追放〉なw」
「わ! いいねー今風~w」
「速い奴は勝つ、これ真理」
「全てを知ってる俺らって強い! カッコいい! ゆえに~~~~~!!!!」
『俺達最強――――!!!!』
◆
というわけで、自分のプレイスタイルを全否定されて。ハブられた……。仲間外れにされた……。
「ぐす……、ぐす……」
平穏一歩がゆっくり、テクテク歩いていると……。ソレは来た。
「話は聞かせてもらった〈鈍速〉系の強化かー、いいね。次のテーマはそれで行こう、なのじゃ!」
あなたは、……誰ですか?
「わしか? わしは神様じゃ!」
神様がそう言った。
「え!? 本当!?」
「嘘じゃ」
「……なんだ、ウソですか……はぁ……」
「まあそっちの話は置いておいて、……勝ちたいか? 〈鈍速〉キャラで」
「え? まあ……はい」
「よし! じゃあこの『神奈川戦記オンライン』をやろう。ARゲームじゃ」
「はあ……?」
一歩はARゲームを渡された。
「ま、結果は明日聞こう。【またな】」
「……」
そうして、言うだけ言って彼女は去って行った。
ARゲーム『神奈川戦記オンライン』、それが平穏一歩の戦いの舞台となる。
神奈川戦記オンライン~スロウスタートくんは、不遇アビリティ〈鈍速〉持ちのキャラを救いたい!!~ ゆめみじ18 @hanadanngo
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