第1話(了) 浄化

陽だまりのような色をした魂から、すっと色が消えていく。

それが少しもったいないように感じ、しかしそれを振り払い浄化させる。



驚いた。まさか前世で関わったことがある魂と逢えるだなんて。

よくよく考えてみれば当たり前だが、こんなことは今まで一度もなかったので考えたこともなかった。




僕はこの魂を通じて、手探りだった自分の前世に少し触れられた。



大好きだった愛犬。

暖かな朝日を彷彿させる毛並みをした柴犬と出逢ったのは小学校に上がって最初の誕生日だった。



ペットショップの入り口のゲージに入れられた君は、哀しみや諦めのようなものを全身にまとっていた。

僕は君から目が離せなくなって、一緒に来ない?と小さく声をかけたら、凄くいい顔で笑ってくれたんだ。



誕生日に犬を飼ってくれる約束をしていた両親は、二つ返事で了承してくれた。

イベントなどない限りは、仕事ばかりで構ってくれず寂しい思いをしていることを勘付いていたからかもしれない。




アサと家族になってから、居られる限りずっとずっと一緒にいた。



賢くて、優しくて、暖かい陽だまりだった。




突然いなくなってごめん。

寂しい思いをさせてしまっただろう。

できることなら、もっと一緒にいたかった。

君の最期を、この場所でだけれど見送れてよかった。



また、逢えるといいね。

今はどうか、安らかに眠って――




無色と化した魂は、導かれるように休憩処へとゆっくり、ゆっくり進んでいった。

まるで別れを惜しむように。

彼に向かってお辞儀をした瞬間、僕の目からポタリと一粒、涙が落ちた。

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魂の洗い処 七海 @nanami-kuno

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