読みました。
最後まで読ませていただきました。
昨今、「ダイバーシティ(多様性)」とともに〈LGBTQ〉という語の認知度も高まてきたように思われます。
男と女という二様の性区別だけではなく、性のあり方はもっと多様である、と。
なるほど確かに、カテゴリー分けや定義化は、そうではない人間が、知らない・分からない物事の表層を理解するためには便利な道具かもしれませんが、しかし実際問題、いわゆる〈セクシャル・マイノリティ〉の名のもとに、上記のようなアルファベットの頭文字をとったカテゴリーの中にまとめられてしまうほど、事態は単純なものではないようにも思われます。
さらに、極端な言い方かもしれませんが、〈LGBTQ〉という語を多用する人には、実は本心では区別したがっているのではないか、そんな胡散臭さが漂っているのです。
この物語の主人公(タイトルにある「女装男子」)である「一冴/いちご」は、そんな単純な分類を拒絶するような存在です。
そして、この物語は、男女やLGBTという語では分類不可能な多様性の本質について、我々、読み手に考えさせてくれるのではないでしょうか。
女子高に進学した憧れの先輩に思いを寄せていた少年。
彼は、とある事情から女の子として女子高に入学し、女子寮で暮らすことになった!
この作品が素晴らしいのは、女装描写などがちゃんとしていること。
「フィクションじゃん」とさめることがありません。
おそらくは当事者の方にも納得の仕上がりといいますか、性的マイノリティを雑に扱う作品とは一線を画しています!
レビュコメタイトルではMtXとしてしまいましたが、主人公はMtFビアンかも知れません――しかし本質的には、こうした分類そのものが馬鹿げているのでしょう。
そういったジェンダー論的な、社会学的観点からも考えさせられる小説です。
じゃあ真面目すぎるのかというとそんなことはない、ちゃんとドキドキします。
ラブコメ的な部分もしっかり楽しめます。
主人公の少年だけでなく、周囲の女性たちにもちゃんと魂が入っているのが、読んでいて気持ちいいです。
ラブコメで、主人公に恋する女の子側の心理まできちんと描かれている作品は、貴重だと思います。
貴方も女装して、全寮制のお嬢様学校に入学してみませんか!?
第二章まで読んだところです。
自分を男とは思えない主人公・一冴(かずさ)は一つ年上の女子の蘭に恋をしてしまう、相手は女子なの? という「相反」のようなものがあるので、これをメインに物語が進むと想像しましたが、冒頭からの急展開で、蘭が在学する白山女学院に一冴(いちご)として入学、従姉弟の菊花も入学します。女子寮で暮らすことになるまで経緯は明確に展開され、納得して楽しむことができました。女子寮なので、男とバレてはいけないという秘密、もう一つの相反が生まれて、この作品の特殊性を際立たせているように思います。女子寮という舞台で一冴(かずさ・いちご)と蘭や菊花がどうなっていくのか展開に期待がふくらみます
目次をみて分かりましたが、単一でない相反に満ちた複雑になるだろうと思われる物語を既に第8章まで書かれていることや、女子寮に入るまでの明快さも知っていますので安心して読み進めることができます。
ぜひおすすめしたい作品だと感じました。
ありがとうございます。
第一章を読んでのレビューとなります。
【面白かった点】
ディックのタイトルを援用しているように、現実を越えた百合世界です。そんな世界への越境の為に、旧仮名遣いとか、志賀直哉のような短文体とか、細かいディテールに演出が施されています。
【良かった点】
では、雰囲気重視のよくある百合作品かと思いきや、チンコ切るとか、「ゲイポルノに出演」とか、あれえ? とか、テンポよくコメディ色が挟まります。これぞ、作者さまの武器でしょう。
【期待している点】
菊花があまりにつよつよなキャラなので忘れがちですが、あらすじを見ると、どうやら蘭先輩とバトルになるとのこと。雰囲気ぶち壊してどんどん百合バトルをやってほしいです。
トランスジェンダーでレズビアンというやや特殊な主人公ですが、少しずつ女の子になっていくのは微笑ましいです。
女の子が男の子になるのも大変ですが、男の子が女の子として生活していくのは様々な難題があるということを見せつけられた気がします。
蘭という女の子が好きになった主人公。
しかし蘭は女子が好きという衝撃の事実から色々あって女子校に通うことに。
男の娘よりもさらに難度が高い女子としての生活で主人公は自分を磨いていきます。
それによって自分らしさ手に入れる展開が上手だと思いました。
丁寧な心理描写もそれをそっと後押ししてくれるようで読んでいて心地良い。
「可愛い」という概念を具体的に語っていくことは難しいですが、この作品はそれをやってみせます。
男の娘ものとは少し違うかもしれませんが、魅力的なこの作品をぜひ読んでみてください。