ラピス・ラズリの瞳
深見萩緒
ラピス・ラズリの瞳
お空になにが見えるだらうか
わたしのつややかだつた目ン玉は昨晩ほじくりかへしてしまつたのだ
わたしのために見てほしい
お空に星が見えるだらうか それは砂糖の星々だつたらうか
おまへの目ン玉は一等綺麗なラピス・ラズリ
虹彩の隙間から恒星どもが飛び込んで
網膜の上を踊り狂つて
美しいものばかり見せてゐる
(なんといふことか、おまへはどうにも微笑みすぎる!)
おまへがまばたきをするたびに
産まれたばかりの星雲が蛋白石のかけらを吹き散らす
(きちんと見せてやつとくれ、カタディオプトリック
これは本当に大切なことなのだから)
かゞやけよ瞳!
わたしの方など見なくともよい
ただ天のみを見つめてゐなさい
火球の燃焼を見逃してはならない
カシオペイアが微笑んでゐる
月がないので夜は一層濃く深く、おまへの額を濡らしてゆく
わたしのうろには映らぬ美しいものたちが
おまへの視神経を揺らかして
鈴のおとを掻き鳴らすだらう
(それでよい それがよいのだ)
おまへが見つけた星座の名前を 時々くちにしてくれるなら
北極星を探してご覧 柄杓の先を伸ばしてご覧
わたしの方など見なくともよいのだ
ラピス・ラズリの瞳
おまへが見つけた星の名を 時々わたしに教へておくれ
ラピス・ラズリの瞳 深見萩緒 @miscanthus_nogi
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