廃坑の奥で、白い花弁に包まれ、両手を鎖で戒められている少女ザキナを見つけた軍人ドーズ。彼女を保護したことにより、彼は世界を揺るがす運命に巻き込まれていく——。
可憐ながらもどこか昏い雰囲気のザキナと、彼女にかつて愛した人の面影を重ねて庇護せずにはいられなくなっていくドーズ。ザキナが有している「画力」という力のせいで、やがてドーズは大きな決断を迫られます。
ここで二人の逃避行の愛の物語となるのかと思いきや、ザキナにはもっと隠された思惑があり……。
時に人を傷つけることも厭わないザキナに戸惑いながらも、手を差し伸べることをやめないドーズの甘すぎると思える優しさがやがて想像もつかなかった結末へと繋がっていきます。
人間の業と愛が深く絡み合い、それでも最後にはやっぱり人は人を救い、あるいは救われることができるのだ、と希望を感じさせてくれる物語でした。
おすすめです!
国境警備隊員のドーズが残党狩りの途中で発見したのは、
「画力」と呼ばれる描いたものを具現化させる力をもつ少女、ザキナ。
銀筆一本で恐ろしいまでの影響を周囲に与える能力を持ちながら、
心も体もまだどこかあどけない少女であるザキナに、
まだ詳しくは描かれないながらあちこちに窺える切実な事情をみて、胸が締め付けられるような思いになります。
栗色の髪に緑の印象的な瞳を持つザキナに、自身の後悔を重ねるドーズは、
そんな彼女の危うさを恐れながらも守ろうとしますが、
自身の立場がそれを阻み、思うように動くことはできません。
一筋縄ではいかないこの2人の行く末と、彼らの抱く過去や願い、
それらが明かされてゆくまでを、息をつめながらも見守りたいと思います。