第7話 七層

開けなよ、と君が言うと彼は首を振った。

君は扉を押したり引いたりしてみるがビクトもしない。鍵がかかっているようである。


「蹴っ飛ばして開けていい?」

君がそう聞くと彼は目を見開いた。

「ドアを蹴っ飛ばして開ける?鍵の部分を壊すってことかい?」

「いや、ドアごと粉々に破壊はかいする」


彼は初めはアハハと笑っていたが、君がふざけていないということに気づくと顔を引きつらせた。

「本気で言ってる…?」

「今まで何個のドアが犠牲ぎせいになったことやら」

「僕の100年間の我慢はか弱い少女の蹴りによって終わる…」

彼はそう言うと、大げさなため息を付いて、笑った。

「100年?」

「人間で言う17歳くらいかな」

へえ、と君はうなずく。


「じゃあ、早速さっそく…」

「しっ、」

君が早速ドアを蹴ろうと足を出した時、レオは君を手で制した。

「声が聞こえる、エルフ達だ」


彼はそう短く言った。君は耳を済ませるが、何も聞こえない。少しの間、君たちは音を出さないようにその場にとどまった。


少し経つと、レオは顔を緩めた。

「もう大丈夫、とりあえず声が聞こえないくらいまでは遠くに行ったよ。でも、ドアを蹴って壊すっていうのはバレるから、出来なくなった」

彼はそう言って肩をすくめた。君には初めから何も聞こえなかったが…。流石エルフということだろう。


だが、蹴って開けられないとなると、どうしたことか。

「そういえば」

君はカバンをあさる。いつか役立つと思って捨てられなかった…、あった!


君はピックを取り出した。

「君はなんでそう変なものばかり持ってるんだ…」

レオは呆れたような、尊敬したような眼差しを君に向けた。

「拾ったんだよ…、よいしょ」

君はピックを鍵穴に差し込んで、カチャカチャと押したり引いたりしてみる。が、鍵が開く気配はない。


「僕にやらせて」

彼は君からピックを受け取ると、鍵穴に差し込んだ。

「やったことは無いけど…どうかな」



カチャン


「開いた!」

君は思わず叫ぶ。レオも静かに、と言うが、凄く興奮しているようだ。


「やっとだ…やっと…」

レオの目に涙がうかぶ。彼はそれを乱暴らんぼうに手で拭うと、ゆっくりとドアノブに手をかけた。

君は、彼の手の上からノブを握る。


「行くよ」


ドアが、開いた。



そこの部屋は、他のダンジョンの一室とまるで変わりのない、唯の部屋であった。

下の階に通じる階段がぽつんと口を開けていた。


「よし、いこう」

君は足を段にかける。が、レオが動こうとしないことに気がついて後ろを振り返る。

「はは…、おかしいよね、ここまで来たのに」

レオの膝は震え、顔は青ざめていた。


「怖いの?」

君は彼の手を握った。よくジェームズが怖がった時にやってあげていたものだ。

彼は一瞬驚いた顔をしたが、君の手を握り返した。

「一緒に行こう」

君はそう言うと、彼の手を引いて、階段を降りた。


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「ここが、7層…」

レオは階段から降りると、一言そう呟いた。

君たちが出た部屋は、今までと同じ石畳の壁と床。ちょうど、レオが拠点にしていた部屋と同じくらいの大きさであった。


「6層とあまり変わらないな」

彼はそう言うと笑った。


その時、君たちの近くで、小さな鈴が揺れるような、しゃりん、という音が響いた。


君たちは顔を見合わせると、各々の武器を手に持ち、その音のする方へと歩いていった。

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ダンジョン@エルベレス みっと @mitto63

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