第30話



夏休みに入り、毎日部活で充実した日々を過ごしていた・・・。と言いたい所ですが、実際はそう上手くは言っていませんでした。



3年生の先輩たちが引退し、下がり切った私たちのモチベーションでしたが、さんちゃんの新たな恋のモチベーションに引きずられ、少しずつ調子を取り戻しつつはあったものの、やっぱり先輩の抜けた穴は大きく、なおも私も何となく本調子は出ずにいました。



夏休みには他校との練習試合もセッティングされていたものの、まだ1年生の出番はなく、センパイ達の応援が主でした。




「おーい!ゆう!!」



ゆうちゃん「・・・ん?」



ゆうちゃんが振り向くと、そこには他校の制服を着た男の子がいました。



ゆうちゃん「あれ!?みりやん!!」



みりやん「ゆうも弓道入ったんか!?」



ゆうちゃん「みりやん、柔道やめたんか?」



みりやん「そうそう、なんや気に食わんセンパイおってな!ガツンとやり込めたん見てた弓道のセンパイにスカウトされてん!」



ゆうちゃん「相変わらず自由やなぁ(笑)」



隣で大人しくいたんですが、みりやんと呼ばれる人と目が合いました。



ペコリと頭を下げると



みりやん「え?え?なんや!?ゆうの女!?」



ゆうちゃん「下品な言い方すんなや、彼女!」



あき「あきです。初めまして。」



みりやん「みりです!みりやんって呼んでや!」



あき「みりやんくん、よろしく。」



緊張しつつもニヘっと笑いながら答えると



みりやん「み・り・や・ん!」



ゆうちゃん「・・・あき、諦め、みりやん言い出したら聞かんから『みりやん』って呼んだって?」



あき「えっと・・・。みりやん、よろしく。」



初対面の人を呼び捨てにするなんて経験した事無かったし、その前にゆうちゃんが『彼女』って紹介してくれたのがくすぐったくて、『えへへ』と笑いながら言うと



みりやん「よろしくな!あき!!」



ゆうちゃん「おぉい!呼び捨てかい!!」



みりやん「え?えぇやん!」



どこまでもおおらかで自由人なみりやん



ゆうちゃん「みりやんは?彼女は?」



みりやん「ん?昨日別れた!」



ゆうちゃん「めっちゃあっけらかんとしてんなぁ。」



みりやん「だってな、束縛きついって!クラスの女子とカラオケ行くだけでNGやねんで!?」



ゆうちゃん「・・・。」



あき「え?2人で?」



みりやん「そうそう!でも好みじゃない女やで!?」



あき「・・・みりやん!アウト!!」



みりやん「え?」



あき「うちかてゆうちゃんがクラスの女子と2人きりでカラオケ行かれたら嫌やもん!」



ゆうちゃん「いや、いかへんて・・・(笑)」



みりやん「え?え?そんなもんなん?」



あき「そんなもんやわ!もう!みりやん大アウトやで!!」



思わず初対面なのにアウト連呼しちゃいましたw



みりやん「そっか・・・。なんや彼女に言われた時はネチネチ言われてムカついたけど、ここまで潔くアウト言われたらぐうの音も出んわ(笑)」



3人で爆笑しました。



その爆笑を見てたのか



「お!みりやん!久しぶり~!!」



みりやん「お!のり!なんしてんねん!」



のり「お前も弓道?」



みりやん「え?お前も?」



みりやんの隣に居る私を見て



のり「え?なに?みりやんの女か!?」



ゆうちゃん&あき「ちゃう!」



めちゃハモッてまた爆笑。



のり「え?誰ちゃん?」



みりやん「俺がみりやん」



のり「それは知ってるし聞いてない。」



あき「ブフッ」



思わず吹き出してしまいました。



みりやん「で、コイツが『ゆう』、俺と同中やってん!ほんで、ゆうの彼女の『あき』」



ゆうちゃん「ゆうです。」



あき「あきです。」



これがここから長い付き合いになるみりやんとのりちゃんとの出会いでした。



のりちゃん「ええなぁ!女子!」



みりやん「ん?」



のりちゃん「うち、1年300人おっても女子2人やで!?」



あき「M校、女子少ないよねぇ。」



のりちゃん「そうそう!ホンマ少なすぎんねん!」



あき「うち、第一志望M校にしようとしてたんやけど、男子率が多すぎて危ないからって先生に止められたもん(笑)」



のりちゃん「マジで!?」



あき「うん。オープンキャンパスは行ってんで?」



のりちゃん「うわぁ!あきがうちの学校来てたら、うちの部活に女子おってんやぁ!!」



ゆうちゃん「ここでも呼び捨てかい!」



笑いながらゆうちゃん乱入w



のりちゃん「え?ちゃん付けした方がええ?てか、自分もめんどいから『ゆう』でええやろ?」



ゆうちゃん「俺はええけど。」



みりやん「あきも呼び捨てで良し!俺が許す!!」



ゆうちゃん「なんでお前が許すねん!」



爆笑しながらわちゃわちゃしてて、見てる私も楽しくなって



あき「呼び捨てでええよ。・・・ゆうちゃんが嫌じゃなかったらやけど。」



ゆうちゃん「もうこの流れでイヤって言うたら『うわ!束縛しぃや!!

』って騒がれんの確定やん。」



のりちゃん「いや、イヤって言わんでも束縛しぃで確定やん?」



みりやん「せやな」



ゆうちゃん「なんでやねん!!」



また男三人でわちゃわちゃ始めて、もうおかしくて笑いの絶えない一日になりました。



のりちゃん「めっちゃ気が合いそうやし、夏休み、遊びに行こうや!!」



みりやん「えぇなあ!」



のりちゃん「プール行こ!プール!!」



みりやん「えぇやん!」



ゆうちゃん「プールはあかん!」



のりちゃん「なんで?」



ゆうちゃん「・・・。」



みりやん「え?え?彼女の水着見せたないとか、そんなん!?」



ゆうちゃん「やかましい!」



顔を真っ赤にするゆうちゃんを見て、私も照れて来ちゃいました。



あき「・・・え?でも、部活メンバーでプール行こうって言ってたのは?」



そう、ゆうちゃん提案で部活のメンバーでプールに行く事になってました。



ゆうちゃん「それはそれ!これはこれ!!」



みりやん「意味が分からん!」



のりちゃん「ブーブー!!」



初対面とは思えないノリで一日が終わりました。

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ヒーロー物語 あききち @sao0626

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