「お母さん銀行」名称やめて。女子高生らが訴え。

塚内 想

「お母さん銀行」名称やめて。女子高生らが訴え。

「子どもの将来を考えるのは女性だけの仕事ですか」

 そう本紙の取材に答えるのは今回の署名活動の発起人である大阪在住の女子高生。彼女は兵庫、栃木の高校生らと共に「お母さん銀行」の名称の廃止を求めてインターネットサイト上で署名活動を始めた。

 子供の将来のために貯金する。と称して子供が受け取ったお年玉を母親が強制的に預かることを「お母さん銀行」と呼んで、どれほど経ったことだろう。その名称に疑問を持った彼女らは何かできないかと考えて今回の署名活動を思いついた。

「『お母さん』とついてるために父親は子供の将来のことに無頓着になり、そのために母親だけが悪者になってる」

 署名サイトが開設されると早速、賛同する署名が集まりはじめた。しかし、それに反対する人々がSNSに書き込む。

「実際にお年玉を取るのはお母さん」「お父さんは酒飲んでこたつで寝てるだけ」「単なる言葉狩りだ」等など。

 中には「『倍にして返してやる』と言ってそのままパチンコに行ったのに帰ってきても元金すら返してくれない」と「お父さん銀行」の存在を暗示する内容もあった。


 スイスのチューリヒに本部を置く世界お母さん銀行連盟は本紙の取材に対して「ご意見は真摯に受け止めます」とコメント。

「当銀行の名称は『お母さん』の持つ暖かいイメージを求めて名づけた。ご理解いただけるとうれしい」

 しかし「『お母さん』のイメージとはほど遠い強制徴収の問題がある」という本紙の質問に対して「それは個々の家庭の問題」と一刀両断。連盟とは無関係という態度を示した。

 またほとんど引き落としができない問題については「預金者の身元が百パーセント明らかにならない限りは支払いは一切あり得ない。第二次大戦中、ナチスの脅迫にも屈しなかった我々は顧客の預金を必ず守り抜く」と決意のほどを語った。


 四歳から十八歳まで父子家庭で育った黒木政仁さん(五〇)は「お母さん銀行の名称問題についてどう思うか」という質問に対して

「私は母を早くに亡くしたためにお年玉を貯金するということはなかった。しかし、父から一日百円の小遣いを一か月千五百円に減額され、さらに小学六年の時に新聞配達をはじめた途端に『働いてお金を得てるから小遣いはなし』と生活保護の打ち切りのような扱いを受けた。世間は『お父さん銀行』の非道も明らかにしなくてはならない」と質問とは関係ない回答を寄せられた。


 なお、高校生たちは集めた署名を提出する際に話し合いをしたいと希望している。その際、代案を提出したい意向を示している。

 代案の内容は子供の将来のためにする貯金ということで「将来銀行」。家族が考えるから「家族銀行」。暖かいイメージの「ほっと銀行」。また引き落としが難しいために「預入専用銀行」または「こわれたATM」が候補にあがっている。

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