第2話
バレンタインデー当日。
探偵・
「イズネ、コーヒーを頼む。牛乳は入れるなよ」
「よつるーん、牛乳飲まなきゃおっきくなれないよー?」
「ほっとけ。あとその呼び方はやめろ」
泉音は粉をカップに入れ、お湯を入れ、半分ほど牛乳を入れて夜弦に渡す。
夜弦はそれを一口飲むと「うんっ!?」と目を見開かせる。
「な、なんだこれは、甘っ!?」
「……甘い?」
泉音は牛乳パックの中を覗く。そこには白ではなく……何かを溶かしたような、茶色っぽい液体が入っていた。くんくんと匂い、泉音は言った。
「これ、チョコだ」
次に、開けたスティックコーヒーの袋を見る。よく見ると筆記体で何か書かれている。
『モリアーティ特製。チョコ味』
さらに背伸びして戸棚を開ける。どさどさと大量の小さな箱が落ちてきた。ハート型の物、真四角のもの。長方形のもの。ざっと三十個はある。全て高級店のチョコレートだ。
「これ、全部チョコだ」
「その辺に捨てとけ。報われない男どもが拾って食うだろ。イズネ、水を頼む」
泉音はカップを受け取り、奥の流しへと向かう。しかし数秒後「わあ、これもだあ……」との声に、夜弦は顔をしかめる。
と、夜弦は棚から落ちてきた大量の箱の隙間からはみ出た手紙に気がついた。
それにはこう書かれてある。
『去年のお返しだ!!』
「……ああ、そういえば」
ふと、夜弦は思い出す。
「去年のバレンタインデー、僕も似たような嫌がらせをした気がするぞ。さすがに等身大チョコはなかったが」
「ええっ!? 」
「……すまんイズネ、その、チョコを消費するの手伝ってくれないか? 金は出す」
「ええー……もうチョコなんて見たくないのにー……最悪のバレンタインデーだよー」
その数秒後、さらに追加のチョコが配達されて来るのだが、高級チョコの味に機嫌を治した泉音は、あっという間に全部食べ尽くしたのであった。
ある探偵のバレンタインデー 萩月絵理華 @hagizuki_wanwan
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