4#5分後に風船で解った愛する白猫とボクの愛

 「ボクちゃーーん!!ありがとーーーーー!!」


 放置廃車の中に野良猫のボクが入ったとたん、白猫長毛のヤンは満面の笑みを浮かべてボクの懐へ抱きつきてきた。


 「ちょ・・・ちょっと!!何いきなり!!」


 「あっ!!これこれ!!この風船!!黄緑のゴム風船!!

 この前にうっかり飛ばしちゃってね・・・

 諦めてたけど、あんたが他の風船を持ってきたらそれで良かったけど・・・ラッキーね。

 あー、萎んじゃったの。」


 白猫のヤンはそう言うと、萎んだ黄緑色の風船の紐と吹き口を止めている留め具を爪で外すと深く息を吸い込んで、



 ぷぅ~~~~~~~~!!


 ぷぅ~~~~~~~~!!



 と、口で黄緑色の風船に息を入れて膨らませた。



 ぷぅ~~~~~~~!!


 ぷぅ~~~~~~~!!



 ・・・はっ・・・


 野良猫のボクは、風船をふくらませている白猫のヤンの頬っぺたをめいいっぱい孕ませてた顔を見て、はっ!!と気がついた。


 ・・・ヤン・・・どっかで見た、聞いたことのある猫だと思ったら・・・


 ボクは思い出した。



 ・・・・・・



 白猫ヤンは、野良猫のボクが子猫・・・赤ん坊猫時代に、心無い人間捨てられて、段ボールの中でみゃーーー!!みゃーーー!!鳴きわめいて居た時に通りすがった、太膨な白長毛のふくら猫と瓜二つだったのだ。


 「どうしたの?ははーん、こんなに幼いのに、捨てられちゃったのね・・・」


 と、仰向けになって張った乳を見せて、


 「どう?乳飲ませてあげる。私の子猫がみーんな死んじゃってね・・・」


 ボクが必死に乳を飲んで、ボクのやっと目が開いて見えた先にふくぶくとした布袋顔のような、優しいその顔があった。

 それが、頬を孕ませた目の前のヤン・・・


 ・・・あの白猫、いきていくのに苦労したんだな・・・


 ・・・太った身体がこんなに痩せちゃって・・・


 「なあに?わたしの顔をジロジロ見て・・・あっ!!ボクって・・・あの時の赤ちゃん猫にそっくりね!!」


 白猫ヤンは、ネックまで膨らんで洋梨のように大きく膨らんだ黄緑色の風船の吹き口に紐を付いた留め具を留めながら、その野良猫のボクの顔を見て目を細めた。


 「あー、やっぱり吐息じゃ風船浮かないわ・・・」


 白猫のヤンの膨らませた風船は、引っ掻き傷だらけの車の座席を弾んで・・・



 ぱぁーーーーーーーーーん!!



 「うにゃーーーー!!」


 「大丈夫?ヤンちゃん!!」


 「えーーーん!風船割れちゃった!!」


 野良猫のボクは、大声で泣いている白猫のヤンの涙をそっと舐めた。


 「ヤンちゃんの白い毛・・・あれから苦労したんだね。ヨレヨレで毛玉になってるし。」


 「そういうあんたも、こんなに大きくなって。私の吐息で膨らませたのと同じよ。

 あの時、通りすがらなかったら・・・」


 「今度は、僕が君を守る番だよ。」


 これが、ボクのヤンへのプロポーズになった。


 5分で恋する2匹。

 それは、黄緑色の風船が思い出された、甦る愛。



 ~君に風船をあげる~


 ~fin~

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君に風船をあげる アほリ @ahori1970

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