第2話 『丘野清美という男②



『ダメだな。もう二日は経ってる。これじゃあ追うのは無理だろう』


黒い髪は強力なグリースによって固められ

艶を帯びている。

目は死んだ魚類のようでもあり、瞳の奥には忌々しいものが含まれていそうでもある。

丘野清美(おかの きよみ)

それが彼の名前であり今の名前だ。

東ノーストリフに古くから伝わる丘堀と呼ばれる職人から枝分かれして現在へと受け継がれる丘野という名前は、

血縁関係なしに継承が可能でありその資格さえ認められれば丘野の証を譲渡することが可能だ。


名前のみが授けられるだけでなく特殊な力も手に入るがその代償はかなり重い

使えば使うほど自分の大切なものを奪う。

しかし命だけは奪わないのだ。

この力は宿主にとっての絶望を深く愛している。

だからこそ宿主の身の回りにある全てものを奪って何もなくなった後に宿主の命をも奪うのだ。

その印としてこの力は使えば使うほどシミのように使用者に染み付いていく。

最初は汚れ程度傷程度のものだが、

段々と黶のようになりその印は

完治しない傷として入れ墨のように体に刻まれる。


既に清美の左腕には

黒い刺青のようなものが腕紋となって記されていくそれは時折青く光ったりして体を少しずつ蝕みながら時折人知を超えた力を授けるの諸刃の剣となる。


コンクリート製の床に染み付いた黒くシミとなった血痕を見つめ、その血痕の中に埋もれたまだ新しい血液を見つけた。

『ニ時間も経ってないな。これでカモフラしたつもりか』


耳につけている小型無線にノイズが走る

ノイズ越しでもよく通る低いのか高いのかわからない声。

間違いなく字払駆檎(あざはら かるご)の声だ。

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皇鳴民間警備 トナリ @Tonari

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