観測者理論というものがある。
日本人が大好きな、観測されることで初めてモノは存在し、見るものによって性質を変える、という理論だ。
簡単な哲学、思考実験の一種だが。
では、この観測者というのはなんだろう?
すなわち神である。
神様は万能で、どんなことでもできる。観測できる。好き勝手に世界を変えられる。そして、変え続けた。
けれども、そんな神さまの外側にも世界があって──?
というのが、この物語の根幹。セカイの仕組みだ。
当然、この論理に従って、世界はめちゃくちゃになってしまう。
次元は乱れるし、次元より高位な場所もぐちゃぐちゃだ。化け物だって出てくるし、災害以上にやばいことも巻き起こる。
とある方法でかろうじて生存している人間たちも、明日は我が身と嘆くほかない。
そんな絶望だらけの世界で。
どうしようもない曠野の中で。
なおも生きることを選択した強き少年たちの戦いが、この物語だ。
彼らは誰もが諦観しながら、それでも歩みを止めない。
愛も希望もありはしない。人間性だって失われていく。
踏破までの道はどこまでも険しい。
それでなお、立ち止まることはない。絞り出した知恵を分け合い、一歩を踏み出す勇気を忘れない。
このレビューを読んだのなら、どうか彼らの人生の一部始終に付き合ってほしい。
あなたたち観測者はきっと、そこでかすかに輝く──光を見つけるだろうから。
今後に期待を込めて、星三つ!
まだ謎が多い段階ですが、レビューさせてください。(見当違いしてる恐れもあるので、続き次第でレビューを修正します)
この作品は全体的に硬い文体ですが。だからこそ緊張感と臨場感がひしひしと伝わってきます。
終末を迎えた後の世界で彼らの棲めるこの世界は浸食されていく(災変の脅威)。にも関わらず人間たちが互いに食うか食われるかの状況。
人間が特有に抱えるこの大いなる矛盾。人間も動物であるからこそ、このリアリティを感じざるを得ません。
はたして、この終末後の世界に生きる人間は、略奪と被略奪を繰り返すのか。
それともこの世界が喰らわれていく現実に立ち向かうのか。その続きへの期待と緊張に息を呑みます。