第61話 俺たちの進む道 2 完結
俺たち高校生組は制服で。
関口さんや満里奈姐さん、山本さんに片岡夫妻の大人組は喪服で。
慰霊碑建立の式典に参加している。
ミッドガルドで死んだ仲間たちと黒田のテロの犠牲者の合同慰霊碑だ。
今現在判明している分の名前が刻まれた碑が公園中に並ぶ。
犠牲者があまりにも多く、しかもまだ増えるので後から名前を継ぎ足していくとのことだ。
本当だったらこういうのは数年後に作るものだが、解散総選挙の結果によっては予算を削られたり計画そのものがなくなりそうだったため急いだ……と直に言われた。総理大臣に。
その総理大臣がスピーチをしている。
関口さんはいつもより口数が少なかった。
俺たちより長く生きてる分、しがらみが多いのだろう。
そして式典が終わり各々が碑を見て回っていた。
泣き崩れる人があちらこちらにいた。
その中で関口さんはある名前を発見した。
小林正治
それを見つけた瞬間、関口さんは泣き崩れた。
それは拉致被害者、ミッドガルドで命を落とした男の名前だった。
「小林の爺さん……千葉に住んでる息子って言ってたんだ。事件後、俺はすぐに探した。でも小林の爺さんの息子は40年も前に行方不明になってたんだ。千葉にすんでた爺さんはそれで離婚して……なんで小林の爺さんが俺を助けるために自分を犠牲にしたのかわからなかった。爺さんは……」
それ以上言葉は必要なかった。
たぶん小林の爺さんは関口さんの中に行方不明になった息子を見たのだろう。
だから関口さんを助けるために命を犠牲にしたのだ。
新聞記者が容赦なく関口さんを撮影した。
俺はインターンとして記者に顔を憶えられていた俺が抗議したが、関口さんが泣き崩れ満里奈姉さんがその肩を抱く姿は翌日のニュースを賑わせた。
悪い男がふいに見せる弱さ。
男泣きは世界中の人々の心を打った。
満里奈姐さんと山本さん、それに歌穂はアメリカへ渡り定期的に実験に参加している。
ミッドガルドへの扉を開ける実験だ。
今度こそ二つの世界の関係をやり直そう。そんな思いからだ。
平和の架け橋はいつかかかるとみんな信じている。
俺は最終的には戦争になると思うけどね。
さてさて、歌穂がアメリカに渡ったって記述でなんとなく察したと思うが、俺たちは慰霊碑設置のさらに後、高校卒業後アメリカに留学した。
ほとぼりがさめるまで海外逃亡生活である。
謎なのは経済学部に願書を出したはずなのに、ハヤトと同じ大学の同じ医学専攻コースにいる件。
やはり国が許さなかったか。まー、俺、理系なんですけどね!
アルバイトは翻訳能力を使って大使館や軍やホワイトハウスや院生や教授の業務を請け負っている。
普通に使い切れないほどの賃金を貰っている。
だって……医学専攻コースクソ忙しいんだもん!
勉強の量・質ともに半端ねえ! 一生で一番勉強してるよ! 使う暇ないよ!
ハヤトの方はアメリカやら日本やらに頼まれて無資格で治療をしている。
ローンも組まずにスポーツカーを買いやがったので金は持っているだろう。
俺も車を買った。なぜかアメリカ軍の軍人向け低利子ローンでの購入を勧められたのでそれで購入。
ただしアメ車にしようと思ったら事務所で一等兵に説教されて日本車のSUVに強制変更。
アメリカの新兵の通過儀礼らしい。俺軍属じゃねえぞ!
あと「新兵向けクレジットカードの使いかた講座」に強制参加決定!
だーかーらー! 絶対俺を軍属にしようって思ってるよね!
関口さんに告げ口したら「歩く核兵器が人生破綻させて暴走しないように教育するつもりなんだろ」と言われた。なにその説得力。
その車でハヤトと真穂と歌穂乗せて週に一度アメリカ軍の退役軍人専門のクリニックでPTSDのセラピーを受けに通っている。
ついでに日本のパーティーで会った閣下の家に菓子折持って毎週みんなで会いに行く。
行かないと「次はいつ会いに来るの?」と手紙が来る。無視すると電話が来る。
監視されてるよね?
成績までバレてたもん!
真穂ちゃんと同棲したかったが強い政治的な力が働き断念。
俺とハヤトはアパートの半地下をシェア。(家賃クソ高い)
真穂と歌穂は女性数人でシェアハウスに住んでいる。
その女性の半分が軍人なのは気にしたら負けだし、うちのアパートの住民も軍人だらけだが気にしたら負けだ。
家賃は日本政府から支給されてるし。
ただうちの近所まで目白の新作映画のポスターが貼ってあるのが地味にムカつく。
いまや世界的大スターだよ! 関口さんの会社と25年契約してるらしいけど!
真穂と歌穂は語学学校から。
俺たちの一学年下になる予定。
ガリ勉しすぎてフラれそうと思っていたが、二人とも死ぬ気で勉強してるので大丈夫だった。
ついていくだけで必死である。
おかしい……エロいことなにもしてないぞ!
そんなある日、連絡を受けた。
ちょっと来いコラとヘリが来る。
軍人に捕らわれた宇宙人状態で連行される。
そのまま某所の基地に連れて行かれると満里奈姉さん、山本さんに片岡夫妻に関口さんが待っていた。
「異世界とゲートを繋げるぞ」
というと俺たちの質問も許さず実験開始。
風水師の山本さんが地脈を調べ、占い師の満里奈姐さんが位置を指定、最後に歌穂が歌い異世界への扉を開ける。
そこは俺が破壊したはずの王宮。
直したのか。
玉座が見える。
「久しぶり」
咲良がほほ笑む。
その横には四宮がいる。
この日、二つの世界は交わった。
積もる話もあるがとりあえず再会を喜ぼう。
地獄の異世界コマンドー 藤原ゴンザレス @hujigon
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