4 残酷な皮肉/ここから始まる異世界生活
巨大なモニタのなかには、いくつもに分割された、様々なプレイヤーの視点が表示されている。
その中の一つに興味深いものを見つけた男は興奮を禁じえなかった。
「『敵』も進歩しているらしい。魔法を使うだけの原始人だとばかり思っていたが……なるほどこういうことか。魔法……魔法! 素晴らしいな! 使い捨ての疑似永久機関、我が
一人笑みを浮かべる男と違って、別のモニタに移った初老の男性は苦々しげに告げる。
『テストプレイヤーの意識消失の原因が分かったのは確かに収穫だが……これには対策のしようがないぞ。なにせ相手は、我々が持ちえない「魔法」という技術、文明を以って反撃してきたんだ。……エインフェリアの通信を通して、まさかプレイヤーの意識に干渉するなど……エインフェリアの製造はなんとかなるが、そのパイロットが失われたのでは話にならん』
「なに、世界中探せばもっと使えるプレイヤーはいるさ。こういうことは現役の軍人より、ゲームに慣れた若者の方が優秀……それは認めるな? 実際、彼らほど容易く他者を切り捨てられるものはいない。ゲームだから、彼らは平気で殺せるんだ」
『これがゲームでないと知られたら、どうする』
「国ぐるみ、世界ぐるみで隠蔽するさ。なんならいっそ公にして正当化してしまえばいい。これは発展途上国への『援助』だよ。未開の地の住民への教育だ。侵略こそが常に時代を切り拓いてきた。得られるリターンは大きい。今更止められるものではないさ」
止めてしまえば、これまでの投資が意味をなさなくなる。
「だから――しかし、まあ、そうだな。あの『喋る人形』には対処しよう。出来れば回収、ダメなら破壊だ。それから、意識へ干渉する能力者……あのエルフに懸賞でもかけようか」
男は高らかに宣言する。
「『エインフェリア』初の、レイドボスイベントの開催だ!」
殺せ、奪え、侵略せよ。
その先に、誰もが夢見た異世界ライフが待っている。
ドールズナイトメア 人生 @hitoiki
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます