走り書き

 

 たとえば、江戸川乱歩の『人でなしの恋』。

 ククラの魔導師には、あの男の気持ちが分かってしまうのである。

 その上で、人でなしは女の方だ、などと思ってしまうのである。



 中島敦の『山月記』を読むたびに、パンドジナモスの弟子は思う。

 自分もきっと虎になるのだろうな、と。

 平凡な自分を許せないのは、自分も同じだから、と。



 セリヌンティウスのような友人が理想だった。

 もしそういう友人がいたら、僕は死ななかったのに、とイホスの弟子は確信する。

 そして、自分はいつか彼のような人になろう、と決心する。



 昔読んだ本のことを思い出して、カタレフシの弟子は嘲笑した。

 アンは何てお気楽で、幸せ者なのでしょう、と。

「壊してやりたいわ、跡形もなく」



 アリスになった気分だ、なんて、エレオスの弟子は時々感じるのである。

 世界は混沌とミルクとたっぷりのシュガーで出来ている。

 そして、いつか必ず醒める夢である。

 

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パンドジナモスは平凡を嫌う。 井ノ下功 @inosita-kou

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