第148話 北の大陸ロジーラスへ1

 俺達は身辺整理を幹部たちに頼み、次の冒険先レイアリグ大陸の北に位置する、ロジーラス大陸へ向かう事にした。


 まずは、レイアリグ大陸、マージガル神国へ行き、そこから北へ行く事になるが。

 ランガルフさんの話からすると、マージガル神国から北の町は殆ど過去の大戦で壊滅的で、町と言う町は殆どが廃墟と化していると言っていた。


 レイアリグ大陸からロジーラス大陸へは、昔は何十kmにも及ぶ橋が掛けられていたがそれは戦争の際に落とされていて使えない。


 飛空艇を使うのが手っ取り早いが、まずは俺がゲート魔法を発動出来る様に、その近くの土地まで行って場所を記憶しないと、神帝専用飛空艇は速度も遅く、途中でワーバーンやドレイクなどに攻撃される可能性だって無くはない。


 まずはレイアリグ大陸の北の調査が先になる。

 今回の冒険はマージガル神国からスタートとなるため、俺達はゲート魔法でマージガル神国へ瞬時に移動したのだった。


 ◇


 ゲート魔法を抜けると、そこはマージガル神都中央に位置する神帝タワーの前に出た。


 目の前にはすでに念話で連絡していたため。

 神帝ライアン、参謀長ポレフ、そしてあの後この神都に残っていたライナが目の前に立っていた。


「アラタ殿。お久しゅうございます」


 神帝ライアンとポレフはそう言って頭を軽く下げた。


「うん。ライアンさんもポレフさんお久しぶりです」

「はい。リッチロードがいなくなり、近辺の魔物も大人しくなったような気がします。マージガル神国はいたって平和になりました、これもアラタ殿達のお陰です。マージガル神国はアラタ殿の為なら、何でもするので気軽に言って下さい」


 神帝はそう答え、次に参謀長ポレフが口を開く。


「アラタ様。北方へ調査に行きたいとの事?」

「はい、そのつもりです」

「我々は神都から半径500キロの範囲は調査を完了しておりますが…、北の方は過去の大戦の傷跡が酷く、整備されておりませんので、バイーダーかビーカルの方が移動しやすいかと思います」


 なるほど。

 いくら今持ってる、イグが作ってくれた魔導自動車のオフロードに対する足回りが良いとは言え、道に大きな穴とか開いていたら意味がないもんな…


 バイーダー(バイク型)とビーカル(車型)なら反重力で宙に浮いて走るから多少のデコボコな穴なら問題なく進めるか。


「ああ…そっか、魔導自動車では厳しいかもしれませんね…」

「そう思いまして、すでにバイーダーもビーカルも用意してありますが、いかが致しましょうか?」

「え?ポレフさん!それは助かります!」

「速度は断然バイーダーの方が速いのですが、凡庸のやつしかありません。そして速度はそこまで速くはありませんが、ビーカルなら軍用の装甲車があります」


 へえ。装甲車なんてあるんだ?

 それなら魔物が急に襲ってきても、大丈夫そうだし。

 寝床にも使えそうだし、女性達はそっちで寝泊まりも悪くないかも知れない。


「有難うございます。じゃあ、その二つお借りしても良いですか?」

「アラタ様。何をおっしゃいますか?貸すのではなく頂いても結構なのですよ。元よりその為に用意したのですから」

「そうですか…、じゃあ有難く使わせてもらいます」

「はい」


 神帝とポレフはニッコリと微笑んで頷いた。


「しかし…」


 チラリと二人は瑞希に目を配らせた。


「え?私に何かついてます?」

「いえいえ…、一度、ほぼ消滅した肉体からの蘇生に驚いています…」


 そうポレフが言葉を吐いた。


「ああ…この通り指一本欠ける事なく元通りに復活しました」


 瑞希は明るくそう答えた。


「ふむう…。ハイエリクサーとは凄い物ですなぁ…」

「うむ。そんな物がこの世に存在するとはな…」


 2人はそう言いハイエリクサーについて深く考え込んでいた。

 すると、ライナが思い立ったように口を開いた。


「あ、アラタさん。マージガル神国のディファレント・アースのクランハウスに少し寄って行って貰えませんか?」

「クランハウス?」

「ええ。アラタさんはまだこの神都のクランハウス来た事なかったですよね?」

「ああ…そう言えばそうだね」

「マージガル神国でもアラタさん達は有名で、この国を救った英雄のクランに入りたいって若者は今でも後を絶たないんですよ?」

「そ…そうなんだ?えっと、レイアリグ大陸のクラン管理ってフェルナンドさんでしたっけ?」


 そう言ってフェルナンドさんを見た。


「ああ、俺とカレンは上手く、長距離ゲート魔法も使えるようになったからな。この大陸のアルカード町と、マージガル神国は俺が管轄しているが…。今はクラン加入者はSTOPさせているぜ?」


 そう言えば、あまりにもクラン加入者が絶えないのでシュクロスさんの町アルカードに約500人。マージガル神国でも500人くらいに制限していたって言っていたな。って事は、オブリシア大陸に約1万人とレイアリグ大陸に約千人のクランメンバーが居る事になる…。中々大所帯になっているようだ。


 確かに有名なクランに所属していれば、仕事探しに苦労しなくても向こうからやってくる。この世界も地球と一緒で、大手には大手なりの仕事があり、信用と実績が第一なのである。


「そう言ってましたね」

「500人そこらでも大変だぜ?パーティ管理ならまあ問題はないんだけどな。握手してくれとか、鎧にサインしてくれとか…。毎回行く度に有名芸能人並みの歓迎を受けるのがな…だから、マージガル神国の簡単な仕事は、ほとんどライナに頼んでいるわけだが…」


 フェルナンドは頭を掻きながらそう言った。


「えええ?師匠…そんな理由で私に頼んでいたんですか!?」

「ああ…わりいライナ!ああ言うの苦手なんだよ…」

「まあ、良いですわ!私はちやほやされるのは意外と嫌いじゃないし!それで、アラタさん。兄も会いたがっていましたし、寄って貰えませんか?」


 そうライナは頼み込んで来た。


「まあ、今回も急ぐ事はないから別に良いけど?兄さんって確か…?」

「やった!行きましょ、行きましょ!」


 俺達は神帝とポレフ参謀長と別れ、銀級区域にあるディファレントアース所有のクランハウスへ向かった。


 ◇


 ライナに案内されて、クランハウスの前に来た。

 結構広い土地を囲んだ塀と、大きな屋敷が中央に立っていた。

 そこそこ大きな門にはプレートが張り付けてあり。

「只今、入隊希望者は受け付けておりません。」と、書かれていた。


「おお、結構大きな屋敷なんですねぇ」

「Hy、アラタ。この屋敷も神帝が用意してくれた物なんだぜ」

「へぇ…それを知っていたらお礼くらい言ったのにな…」


 ライナが門を開き、どうぞと手で促したので中へ入った。


 庭で訓練していたクランメンバーがこちらに気付いた。


「ま…まさか!アラタ様だ!ミズキ様もクラウス様もいる!いや…幹部全員揃っているぞ!!」

「マジかよ!?」

「かっこええ!」

「クランマスターアラタ様が来られた!」


 庭のメンバーの大きな声に気付いた他の面々も、こちらを凝視していた。

 ざわざわ…ざわざわ…


「ほらな…、こうなるのが俺は嫌なんだよ…」


 フェルナンドが額に手を当ててそう言った。


「まあ、なんとなく想像できたけど…」


 ざわついてはいるものの、そのメンバー達は緊張しているのか。

 それ以上近づいては来なかったので、すんなりと屋敷の門まで辿り着いた。

 屋敷の門が開くと小走りで一人の男と、見た事のある中年の二人が出て来た。


「お待ちしておりました。アラタ様」


 そう言った男も見た事がある。

 そう、ライナの兄ラビだ。そして、その後ろにいる二人はライナとラビの父と母だ。


「あれ?ライナのお兄さんのラビさんだったっけ?」


 俺は顔を見るなりそう言った。


「はい!あの時は、マージガル神国第134調査団の団長をしておりましたが。私も父と母も、今はこうしてディファレントアースの一員として、頑張っています!」

「へぇ、そうなんだ?」


 さっきライナが兄も会いたがっているって言ってたのはこういう事か。

 フェルナンドさん何も言わないから全然初耳だし…。

 まあ、組織なんで、トップの俺の耳に入れるまでもないって判断なんだろうなぁ。


「はい!でも、まだ私は銀級ですが頑張ってクランの名前を汚さぬよう妹に追いつきたいと思います!まあ…白金級なんて永遠になれそうにありませんが…ははは…はは…」


 ライナは俺達と一緒にリッチロード討伐したので、神帝から賜った最上級クラスの白金級になっている。

 白金級クラスなんて、国家要人クラスだ。

 妹が一番上の白金級だと、兄の苦労もいろいろと察した。


「なるほどです…。ラビさん。うちのクランの為に頑張ってくださいね」

「はい!アラタ様に直に言われると心引き締まる思いです!」

「ははは…それはそうと。結構、綺麗なクランハウスだね?」

「はい、妹の…あ、ライナからフェルナンド様からの指令を洩れなく全て聞き、ちゃんと皆、一丸となって仕事をこなしています。ここの管理も私に一任されて光栄です」

「うんうん」


 俺が頷いた時。


「Hy…ライナ」

「いや師匠…これはその…別に仕事をほったらかしていたわけではありませんよ…兄に力を貸して貰ったと言うか…」


 後の方でフェルナンドさんが、ライナの背中を何度か小突く音と、2人の声が静かに、そう聞こえた。


 どうやら、フェルナンドさんはライナに管理を任せ。

 ライナは、兄のラビさんに仕事を押し付けていたようだった。

 ラビさんにまで声は聞こえておらず、ハテナ顔していたので、今はそっとしておこうと思った。


 後から聞くと、ラビ、ライナの父母二人はこのクランハウスの料理全般と、メンバーの掃除などの割り振りをしているのだと言う。

 元々、宿屋を経営していたお陰もあり、クランハウスは清潔かつ、メンバーの健康にも一役かっているのだそうだ。


 俺達は、マージガル神国メンバー達に盛大に歓迎を受け。

 後に、芸能人のように握手とサイン攻めにあう事になったが、それも俺らの役目だと思い、部下たち一人一人に頑張れと言葉を投げかけたのだった。


 そして、俺に近い存在としてライナ家族にも、グランドヒューマン化を勧めてみたのだが。


 兄のラビは勿論、強くなりたいと言って承諾したが、親二人はそれを断り。普通に死んで、次また生まれ変わる時の楽しみを味わいたいと言っていた。


 なんにせよ。

 俺に関わる全ての人間に幸せであって欲しいと思うのだった。





◇ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー◇


後書き。

更新が凄く遅くなりました。

最近では本当に時間がなく、暇を見つけて少しずつ書いてます。

そんな私ですが。

切らずに、待ってくれているファンの皆様が居る事が幸せに思います。

また、時間さえありましたら、頑張って書きたいと思っていますので、これからも宜しくお願い致します。


作者:瑛輝

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