君と最後の花火

第1話

「ごめん、別れたい。」

重量が少女の小さな心に対しては重すぎる、そんな7文字を打っては消し、打っては消しの繰り返し。

この77億人もの人々の中で私のことを好いてくれる人がいるという、毎日その事実を噛み締められるほどの幸せな状況下にいま現在私は位置しているのにもかかわらず、こんなこと言っていいのだろうか。世界を100人の村人だと例えたら、という内容の本を小学生の時に読んだことがあるが、100人のうち自分を好いてくれている人を手放すような村人はきっと1人もいないだろう。そこで幸せに妥協してしまったから、その村人は石を投げられ、汚水を飲んで生きる、下級村人になってしまうのではないか。

いやいや、しかしながら自分は付き合った時から一切彼に対する好意がないのだ。

ずっと、中学二年の頃からこんな恋愛ごっこをして生きている。周りはきらきらした顔できらきらした恋をして本当に幸せそうなのにいざ自分が人と付き合ってみるときらきらどころかむしろ自分がくすんでいる、滑稽な人間にしか思えなくなる。

「ごめん、別れよう。」

こんな1年を私は、あと何回繰り返せばいいのだろうか。

島田七瀬は送信マークを押してその7文字の改良版を送り出すと、ヘッドホンでハイハットが鳴り響くドラムとゴリゴリと主張が激しいベースギターが印象的なお気に入りの曲で、耳を封じこめた。

私には、音楽があればいいや。

そう、自分自身に言い聞かせるように。

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君と最後の花火 @nanairo_i

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