第3章25話 『おわりのはじまり』

半年以上お知らせもなく更新を止めてしまって申し訳ない……っ

当時途中まで書いていたこの話を投稿して、『〈君〉と〈私〉のラブコメ的日常カッコカリ。』は無期限の連載中止とさせていただきます。

現在は短編小説に力を入れて執筆を続けていますので、何卒よろしくお願いします。


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「——」


 そこは、静かな場所だった。年端も行かない子供たちが十数人も集めらた、家具もない白い箱のような部屋。

 ある少女は膝を抱えて、ある少年は床に横たわって。恐ろしいほどに、静かな部屋だった。


 ——そこに。


「たっだいまー!」


 雲間に差し込む陽光のように。光をもたらすのが■■だった。


 ——その光を受け入れる余裕があるのは、私くらいのものだったけれど。


「おかえりなさい、■■」


 応える者のいない重苦しい空気に耐えかねて、私だけが彼女を歓迎する。


 私と■■以外のみんなは、誰もこちらを見てはいない。みんな、自分の殻に篭っているのだろう。当たり前だ。「戦闘訓練」と呼ばれる殺し合い丶丶丶丶で、明日死んでしまうかもしれない。今日にでも誰かを殺さなくてはならない。そんな中で、対戦相手ともなり得る他の子供と会話などする私たちの方が異常なだけ。



「よっ、ピトス!読書室行こっ!」


「■■の方から本を読みに誘うなんて珍しいですね。普段は鬼ごっことか言って永遠追い回しやがりますのに」


「ほっ…他に相手がいないからしょうがないじゃん!ピトスなかなか鬼やってくれないし」


「読書室行くなら早く行けってんですよ。今日は何読みます?」


「本を積み上げてタワーを作ろう!」


「それ片付けるの私なんですけど?」



 .                 ❇︎                 .




 読書室を訪れて、10分もしただろうか。この部屋にいるのは、私と■■だけ。この施設での唯一の娯楽である本も、施設に入れられて数日もすれば皆読む余裕を失う。

 私だって、正直1人では読む気は起きない。


 ちら、と椅子を並べて寝そべる■■の顔を見やる。1人じゃない。■■がいる。それだけが、私の心を支えていた。

 手元の冒険小説に視線を戻す。私が憧れたのは、《英雄》、その隣の席だ。


 ——だから。


「——脱走計画、始めようか」


 この小さな英雄の隣で、私は私の物語を歩んでいけるのだと、信じていた。



 ——そんなわけは、なかったのに。






===========


──まだこの物語は、始まってもいないのに。

──この場所には、明かされない謎ばかりが残される。

──彼の知った「世界の真実」も。彼自身の能力も。才能も。全てが虚実でしかないというのに。

──真実は、暴かれることなくここにあり続ける。


──ボクはそれが、無念でならない。

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〈君〉と〈私〉のラブコメ的日常カッコカリ。 【コメカリ】【異世界冒険譚】 初見 皐 @phoenixhushityo

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