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「死んだうさぎとタートルネック」あとがき

「死んだうさぎとタートルネック」あとがき
初見皐

 インフルエンサーの女子高生がウサギを殺した画像を投稿して炎上した。同じ部活の後輩が心配して探しにくる。
 そんな感じでお送りした気がする本作、「死んだうさぎとタートルネック」です。読んでくださった方にも、あとがきから読む派のみなさんにも、最大限の感謝を! 初見皐です。
 私がカクヨム甲子園に応募する最後の小説、あとがきに書きたいことはたくさんありますが、あまりしみじみしていては紙幅が足りないのでさっそく作品の話をば。
 本作の主人公、兎崎先輩とその後輩、「カメ野郎」。彼女たちはどちらも、それぞれに致命的な歪みを抱えています。兎崎先輩は母親からのとある非常識なお願い──命令に、簡単に従ってしまうような危うさを。カメ野郎後輩はそんな先輩の姿を見ていながらも、他者への干渉を避ける諦観を。それぞれの背景によって植え付けられている。そんなふたりのほの暗い繋がりと、彼女たちが部室で過ごす最後の夏のお話。
 本作のテーマのひとつは、自ら命を絶ってしまうような「諦観」です。物語を通して「いのち」という題材を扱う。これは、私にとってまだ許されていないことなのかもしれません。以前近しい人から謹聴した「高校生が人の死を扱うのはまだ早すぎる」という言葉が、まだ心に刺さって抜けません。私自身、「タートルネック」の最後の一行が、安穏と生きてきた私に許される言葉だったのか、確信がもてないでいます。
 兎崎先輩はどうしてウサギを殺してしまったのか。カメ野郎はどうしてタートルネックを着ているのか。物語のなかに描ききれなかったその理由を、願わくば想像してもらえますように。

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