継承される物語と、それを支える文章の愉しみ

 沈み滅びゆく世界の中、最後に空を目指した少年と少女と、その希望の行く末の物語。
 やばいやつです。人にお勧めしたいけど、一体どう説明すればいいのか見当もつかなくて参ってしまうお話。ジャンルは一応「異世界ファンタジー」で、確かに舞台設定から分類するならそうなるのですけれど、でもその辺はどうでもいいというか、もう説明の取っ掛かりにすらならない感じの作品。どうしよう、どうしても「すんごい良かったので読んで〜」になってしまう……困る……。
 文章がとてつもないです。本当に綺麗で、とにかく読んでいて気持ちがいい。この辺は特に前半二話(「1」と「2」)が好み。個々の言葉の選択センスというか、具体と抽象のバランスによるスイング感。形容の美しさがそのまま少女の個を表現しているところ。文章の理路の組み立て方。動機あるいは理由にあたる部分、「どうして」や「だから」の答えの、その宝物を見つけた瞬間みたいな納得感! なんだかひどくわかりづらい説明になってしまいましたけれど、もう本当にただ自分の感じたものをそのまま書きました。そう簡単には言語化させてくれないタイプの魅力。
 後半二話の展開もすごいです。打って変わって、というか、大きく拓けて繋がっていく物語。この辺はもう自分の語彙ではとても語れないので諦めてしまいますけれど(だって何をどう言ってもなんだか野暮な感じになっちゃう……)、とにかくすっかり飲み込まれました。こんなふうに物語が動いていくなんて、と、そう圧倒されながら流れ着いた終着点の、そのえも言われぬ分厚いカタルシス。すごい。本当に余計な感想なんか言いたくないのでとにかく本編を読んでと言いたくなる、あまりにも圧倒的な物語でした。やばいやつ。面白かったです!