第5話「黒猫と優しい家族」

 あたしは窓の外を見つめていた。



 たっ君が横にはいはいしてやって来てペタコンと座る。


 たー


 ありがとう、たっ君


 たっ君があたしの頭を撫でてくれる、あたしはたっ君に頬擦りをした。


 ニャー……(お母さんたっ君の為に何も出来ないのよ……)


 あたしは通じない言葉でそう呟きもっと悲しくなった。


 …………考えてもしょうがない、今はあたし猫なんだ、たっ君のそばに居られるだけでも幸せなんだ


「おお龍弥♪ クロノと一緒か? 仲良しだな」


 冬馬さんがおずおずとやって来る、なんか企んでる顔だ。


 ニャー♪(あたしには解るんですからね、冬馬さんのそういう顔♪)


「見ろ龍弥、父ちゃんタブレット買って来たぞ、コレで絵本ダウンロードし放題読み放題だ♪」


 冬馬さんが膝にたっ君を抱え、タブレットPCに絵本アプリをインストール、そしてその絵本を読み始める。


「おっ、龍弥スゲーな、タブレットペチペチ出来んのか?」


 たっ君が冬馬さんの膝でタブレットの絵本をスライドさせめくりページを自分で進めている。


ニャー♪♪(さすが我息子たっ君、現代技術を使いこなしてる、天才♪♪)


 夫婦そろって親バカである。


 あたしはフッとたっ君の前に座りタブレットをさわる。


「なに、やってんの……クロノ……??」


 あたしが冬馬さんを見上げると冬馬さんは青ざめていた。


───────────────────


宛先:冬馬さん

件名:絵本

本文:冬馬さん、たっ君に絵本読んでくれてありがとね♪


───────────────────


 あたしはついそのタブレットを操作し冬馬さんのスマホにメールを送っていたのだ。


 ?


 ?


 ?!


 あっ…………コレって冬馬さんにはホラーなんじゃ?


 チラリ……



「夏美が化けてでたーーーー!!!!」



 あたし負けない、たっ君が立派な大人になるまで!


 冬馬さんはよほど怖かったらしく、あたしイコール夏美ことクロノ君をお寺に連れて行きお祓いをしました、あたしはそれ以来タブレットに触っていません。



 冬馬さんの居る時にはね♪

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黒猫転生お母さん~生まれ変わったら猫だったが愛する息子の為に頑張る!~ 山岡咲美 @sakumi

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