第17話 恵 4
「綾ちゃん......⁉︎」
「うん?恵目覚ましたの?まさかあの口づけで......?」
「いやちゃんと目を覚ました状態で堪能したから!」
「待て恵、少し静かにしようか。これ以上は悪化する、それと鈴木さんいつ戻って来たんだ?」
俺もテンパりかけたが、目の前で俺以上にテンパりそうな子を見て、気持ちが落ち着いていった。
いや寧ろ無理矢理落ち着かせた。でないと顔を赤くした、この子が何を言うか気が気じゃあない。
「ほんの4、5分前よ、恵がまた寝てると思って静かに扉を開けたら、信楽さんが恵に覆い被さるようにしてキスしてるんだもん、すぐに閉めて近くの自販機に行って待ってたのよ」
なるほど、この感じなら話しを聞かれた訳じゃあなさそうだな。
いずれ恵から話しはいくだろうが、今は必要最低限の情報だけ伝えとくか。
「まぁ見ての通り、恵と付き合うことになった」
「そうみたいね、良かったじゃあない恵」
「うんありがとうね、それと今日心配かけてごめんね」
「別にいいのよ、寧ろ早退ができてラッキーなぐらいよ、だから恵は気にせずゆっくり休んで」
「うんありがとう綾ちゃん!そういえば2人はもう自己紹介済んでるんだよね?」
自己紹介?あー、そういえばまだ済ましてなかったな。
「レインではチラッとしたけど、まだきちんとは話してなかったわね、改めて私は鈴木綾、気軽に綾とかでいいわよ、それで恵とは中学時代からの友達、同じ陸上部だったけど、私は選手の方じゃあなくマネージャーね」
改めてお互い向き合い挨拶を交わすことにする。
バタバタしていてちゃんと見てなかったが、落ち着いて見てみると綾は、肩甲骨ぐらいまである黒髪に7,3分けられた眉の下ぐらいまである前髪と、如何にも優等生もしくはクラス委員長やっていてもおかしくない雰囲気があった。
加えて綾には男なら一度は目で追ってしまう程の大きな膨らみが胸部にある。
俺もその内の1人だが、殺気を纏った視線を隣から感じ、瞬時に目線を顔に移す。
「私だってそれなりには......」
そのセリフ言うなら、せめて殺気は取りの除いてくれ......。
「えーと、まぁ既に知っているとは思うけど、俺は信楽智也、呼び方何でもいい、引退まで陸上をやっていた」
「なら私も恵と同じように智也て呼ぶわね」
それから恵も交え話しは続いていき、恵との思い出話しと、俺が知らない恵を知れたりした。
「悪い、ちょっと飲み物買って来る」
「ならコーヒーも一緒にお願いしてもいいかしら?」
「了解」
話しが弾んだこともあり喉が渇き、自販機に行くことにした。
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(綾視点)
「彼話しに聞いていたよりも、ずっと良い人じゃあない、本当に良かったわね恵」
「うん......!ありがとうね綾ちゃん」
そう言って照れるように顔を赤くし微笑む。
ホント恵て可愛いわね......!
何というか小動物のような愛くるしいさがあって......!
だから、余計な虫が近づかないように気にかけていたんだけど、恵から話しがあった時は本当驚いたわ。
名前を聞くまでどう諦めさせるか考えていたのに、相手が信楽智也て聞いて二重の意味で驚いたわよ。
でも予想外ではあったけど、好都合でもある。
ーーー彼には恵が必要。
「恵、彼......智也には、これ以上あんな顔をさせたらダメよ、絶対」
「あ、綾ちゃんどうしたの?」
「わかった?」
「ーーー!?」
私の顔を見て驚いたように瞳を大きく開くが、何かを察したのか、口元を締め目を細くし、恵を起点に真剣な雰囲気が漂う。
「わかった」
疑問に思うことは多いはず、けど恵は追求することなく一言そう返事をする。
ーーーごめん、恵。
口には出さず、心の中でそれだけを告げる。
さぁ暗い空気はこれで終わりにしましょうかね。
「ーーーで、エッチはいつするの?」
「エッ......!?」
「いつするの?」
「もう......!綾ちゃん!」
耳まで真っ赤に染める恵。
うん、やっぱり恵は可愛い。
病人じゃあなかったら今頃撫で回した。
いや智也は病人の恵にキスしてたんだから、私もキスなら.........有り?
「あ、綾ちゃん、顔が怖いよ......?後何だか身の危険感じるのは何でかな......?」
何故そんなケダモノを見る目で私を見るのかしら?
トントン
「智也だけど、入って大丈夫か?」
「あっ!智也君戻ってきたみたい!」
チッ......!!
扉のノック音と共に聞こえた智也の声に、タイミングの悪さを感じつつ、心の中で盛大に舌打ちした。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
「俺は何で綾に不機嫌な顔で睨まれてるんだ?」
「あははは......、何でだろうね?でも私的には助かった......かな?」
自販機から戻ってきた俺は、何故だか2人から相容れない雰囲気を感じた。
俺がいない間、2人で何話してたんだ......?
今どこにいますか?誰か教えて下さい。 「信楽智也さん貴方が好きです」「えっ?」 湯呑み 湯 @yunomiyu
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