第十四回 そして、開いて!


 ――それは、人込み外れた場所から。店内からエスカレーターで降りた一階の……そのクリアーな自動ドアのある出入口。駐車場が隣接しているフロアーみたいな所。


 その子……せっちゃんは、まず驚いた。


「あれれ? 梨花りかが二人?」


 と、いうことなの。……そうだったね、彼女は僕が一人っ子と思っていたから。僕もまたその頃は、双子の妹の存在を知らなかった頃だったから。話は長くなると思いつつも、


「双子の妹の千佳ちかでーす。ねっ、驚いたでしょ?」


 と、可愛さ満点の自己紹介を始めて……可奈かなが、


「ちょっと千佳、太郎たろう君の前だからって、急にキャラ変えてブリッ子しなくてもバレバレよ。梨花と双子の時点でね」と口を挿み、「可奈、それ、どーゆー意味?」と僕もまた。


 ――で、


「まっ、そーゆーことだ」と、可奈はその子……せっちゃんと向かい合わせに立ち、両肩に手を置いて「あなたとは長い付き合いになりそうね。梨花は私の大切な子だから、これからは抜け駆けなしよ。私は藤岡ふじおか可奈。あなたは?」と、強い目力で。


日々野ひびのせつ。……梨花とは東の都で、小六の時に同じクラスのクラスメイト。ううん、ただのクラスメイトなんかじゃないの。私にとって、とっても大切な子」


 そして火花散らす展開へと……と、思いきや。


「ねえ、『せっちゃん』でいいのかな? 一緒に来る? 梨花のお家」


「うん! じゃあ、私は『可奈ちゃん』でいいのかな?」と、お互いがお互い、満面な笑顔で手を取り合う。すると太郎君は、……そう、何かを思い出したように、


「もしかして、あの日々野さん? 生徒会副会長の……俺、あっ、いや僕、来年度から後任になる霧島きりしま太郎。確か、日々野さんは生徒会の会長になられるんですよね?」


 そして皆がビックリする。皆が皆……そう言われてみたら、太郎君も市立天王てんのう中学校に在籍。せっちゃんとは同じ学校で、同級生ということになる。そして此処、この場所から開きゆく物語。――そう、僕らの物語は快晴の光の中へ。まだ始まったばかりなのだ。


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それは、りかの宿題。 大創 淳 @jun-0824

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