第十三回 ……結ぶ。


 ――遂に、その時来たるだ。バスを乗り継ぎ五つ目の……この場所。


 スタンプラリー最後の店舗、ジョーマル。五番目にして、限りなく五番町に近い場所だから、僕のお家に最も近くて、千里の町の最も端だから……



 そして五つ目の、最後のスタンプになるはずだったの……


「……残念ながら『MS81・マンダム』の限定版は、つい先ほど品切れしました。代わりといっては何ですが……」と、お店の人は言うけど、そこから先は聞いてなく、膝から崩れるせっちゃんの方に意識が集中して、「そんな、そんなのって……」と繰り返しながら、「ちょ、ちょっとお客様」と、お店の人が慌てるほど泣きも大泣きになって、


「……あっ、せっちゃん、元々が難しいものだから、ねっ、帰ろ、ねっ」と、どうしたらいいものか、わからなくなって――いきなりこんな結末になっちゃって、


「私が遅刻しちゃったからあ……ごめんねえ。あの日ね、梨花りかがしてくれたように、プチ家出した私を励ましてくれたように……梨花のお陰でママだってわかってくれたから、だから、どうしても欲しかったの。梨花と一緒でなきゃ、ヤダなのお」と、まるで小さい子が泣いているような感じの、濡れた顔も隠さず床にペタリと座ったまま、周りの人たちの注目も関係なくで……その周りの人の中から、



「ホントに、しょうがないね、あなたたちは」


 と声が聞こえ……たかと思ったら、僕らの前にその姿を現し、出現に至って……


「か、可奈かな、それに……」


 グスッ……と泣けてきて「ごめんね、千佳ちかあ……」


 千佳も太郎たろう君もいて、それに何故かティムさんも。……で、可奈は近づく。僕ではなくて……えっと、せっちゃんの傍へ? そしてね、「ほらコレ、あげるわよ」と、声を掛けて手渡す可奈。で、せっちゃんは「えっ、いいの?」と、ビックリして泣き止んだ。


「さっさと立つ」と、可奈はせっちゃんを立たせて、僕らも一緒に人込みから……



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