第2話 邂逅
まさか、と思い宛名を見るとやはり彼からだった。いつ手紙を持っていったのかは分からないがそれでも彼からの手紙は嬉しかった。
『手紙ありがとう。本当は今すぐにでもさくらに会いたいよ。ただ、待つのはやめてくれ。気持ちが揺らいじゃうんだ。来たるべき時がきたら必ず会いに行くから。それまで文通で我慢してくれないか?』
どうやらバレていたらしい。もしこのの先も手紙を置いて待っていたら文通ができなくなるかもしれない。そう思うと待つ気はおきなかった。それから私たちは毎日文通をし続けた。
『今日はね、唯香と遊園地でデートしてきちゃった!めっちゃ楽しかったなぁ。でもやっぱり賢吾君と行きたいな。絶対一緒に行こうね!約束だよ!』
『そっか、楽しそうだな。でもジェットコースターとかお化け屋敷とか大丈夫だったのか?さくら、めちゃくちゃビビリだろ?まぁ唯香と一緒なら平気か。あと俺もさくらと一緒に行きたい。だから、約束だ。』
『正直ジェットコースターは怖かったかな......。でもお化け屋敷は唯香が守ってくれたから!賢吾君も守ってくれるんだよねぇ?ふふっ冗談だよ。賢吾君もなんだかんだ怖がりだもんね。それと一緒に行きたいって言ってくれてありがとう。』
『いや、別に怖がりっていうかなんというか、そう、少し暗いところが苦手なだけだから!それにさくらがいたら守るに決まってんじゃん。大切なんだから。』
そんなことを言われるとこっちはなす術がない。カッコ良すぎるよ......。
そんな当たり障りの無いやり取りを1ヶ月ほど続けていた。ある日、手紙を置きに行こうと家を出ると中学生くらいだろうか、少し体調が悪そうな子が玄関の前に立っていた。
「どうかしましたか?」
「......あの、穂村賢吾さんって方を知っていますか?」
「知ってるも何も......私、彼とお付き合いさせていただいてるさくらと言います。あの、彼が何か......?」
「彼女さんだったんですね......。すいません。」
「あの、とりあえず中に入って。体調悪そうだし......。」
この時、彼女を中に入れたことを後悔するなんてこの時の私は思ってもいなかった。
「すいません、昔から貧血気味で、彼に助けられた時もそうだったんです。信号を渡っている時に倒れそうになっちゃって、気づかなかったんです。トラックが来てるの。背中が急に押されて振り向いたら何秒か前に私がいた場所にはトラックが突っ込んできていて、何がなんだかわかりませんでした。そしたらどさって音がして、彼が地面に叩きつけられた音でした。すぐに助けを呼ぼうとしたのに腰が抜けちゃって、結局彼は死んでしまったんです。だから彼を殺したのは私なんです。」
この時、彼が生きていることを知らなかったら私はなんて言ってしまっていただろう。怒りを露わにしていたかもしれない。本当に悪いのは彼女ではなくトラックの運転手なのに。
「いいの、気にしないで?あなたは悪くない。それに彼は生きてる。だからあなたが気に病むことなんて無いんだよ。」
「え......?生きてるんですか......?でも、彼当時すごい怪我で......。」
「えぇ!今賢吾君と文通してるの。見る?」
そう言って私は彼の手紙が入ったケースを取りに行く。
「......!あの、これ本当に彼からなんですか?」
「えぇ!ちょうど今から手紙を出しに行くところだったの。」
「あの、すいません。そっちも見せてもらっていいですか?」
「え?あぁ、別にいいけど。」
そう言って私は手紙を渡した。彼女は私と彼の手紙をしばらく見比べて言った。
「あの、気のせいだったらすいません。これ......」
「どっちも同じ人の字ですよね?」
もう会えないあなたへ @Shukan0816
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