第4話 旋律は時空を超えて
メリナ・ミストレア・ミルシャを連れて、バルオキーへとやっと戻ってきたアルド。バルオキーに入ると、村じゅうでいろんな人が作業をしていた。
「何だ これは……!」
「すごいじゃろ……!」
驚いているアルドに声をかけたのは、村長だった。
「爺ちゃん……! みんなはもう着いてるか?」
「ああ。それが 桃色の髪の女性がおったじゃろ? あの子がよう働いてくれての。」
「そうなのか……?」
「祭りの段取りから 出演者の打ち合わせ 店とのメニューの相談まで 的確に指示を出してくれて 本当に大助かりじゃわい!」
「そんなに!? さ さすが KMS社のマーケティング担当だな……。」
すると、噂をしていたシャノンがやって来た。
「あっ お帰り アルドくん! そちらのお三方は 出演者の方々かしら?」
「ああ。」
「じゃあ こっちに来てもらえるかしら? 打ち合わせをしたいの!」
「わかったわ。」
「じゃあ 行ってきますね アル!」
「後でねー!」
3人と別れると、村長は言った。
「しかし お前も気が利くの。まさか 司会者まで連れてくるとは……。」
「司会者……? オレは連れてきた 覚えはないけど……。」
「ほれ あそこにお前がよく連れている2人が ちょうど舞台に立っておるじゃろ。」
「あれって……。」
村長の言う方を見ると、そこにいたのはリィカとヘレナだった。
「司会者って まさか リィカとヘレナのことか!?」
「ああ そうじゃ。頼んだら 快く引き受けてくれたわい。」
「大丈夫かな……。」
「それに お前がよく一緒にいる女の子も 鍛冶屋の一人娘と協力して 店の準備を手伝ってくれておるぞ。」
「まあ 確かに エイミとメイって似てるような……。」
「この調子なら 今日の暮れには 準備が終わるじゃろう。」
アルドは周りの様子を見ながら言った。
「……いよいよ 始まるんだな。」
「ああ。村の皆も楽しんでくれたらいいんじゃが……。」
「きっと 楽しんでくれるさ。」
「……そうじゃな。明日が待ち遠しいわい。」
こうして、村中で準備が行われ、村長の言った通り夕方にはすべての準備が終わった。
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「…… お兄ちゃん…… アルドお兄ちゃんたら!」
「う うーん……?」
「お兄ちゃん! 朝だよ 起きて! アルドお兄ちゃん!」
そういって、誰かがカーテンを開けた。暗かった室内に、一気に日差しが差し込む。
「ふぁ~あ……。ああ フィーネか……。なんだ もう朝か。おはよう。」
「もう朝か じゃない。お天道様はとっくに ペカリの樹の上じゃ。」
「うわっ 爺ちゃんか! あれ フィーネは……?」
「今のは わしが真似したんじゃ。フィーネみたいに起こしたら すぐに起きると思うてな。」
「そ そうなのか……。」
アルドは、前にも何度か聞いたような気がするやり取りをしながら、答えた。
「それより アルド。お前に祭りの始まりの合図 頼めるかの?」
「えっ いいのか?」
「ああ。わしは スピーチをせねばならんからな。」
「わかったよ!」
「もう 会場も村の者でいっぱいじゃ。いつ始めても良いぞ。」
「わかった。じゃあ 準備ができたらいくよ!」
「うむ。」
村長はちゃんと起きたのを確認して、1階へと向かった。途中振り返って、1度うなずくと言った。
「わしは忙しいから もし2度寝したとしても 起こさんからの。」
そういって、階段を降りて行った。
「さすがに 今回は 2度寝したらまずいな……。」
アルドは準備を済ませると会場へと向かった。
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「よし。そろそろだな。」
アルドは村長と会場に着くと、舞台にいるシャノンに合図を送った。そして、シャノンが舞台袖にいる司会の2人に合図を出した。いよいよ、音楽祭の始まりである。
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リィカ「レディース アンド ジェントルメン!」
ヘレナ「いよいよ 初めてのお祭りが始まるわ! 題して……」
2人「『緑の村の音楽祭』!」
観客「わぁーー!」
リィカ「申し遅れマシタ。本日の司会ハ ワタシ KMS社製 汎用アンドロイド リィカ 改メ MCモデル ト……」
ヘレナ「特殊モデルの合成人間 ヘレナよ。よろしく。」
観客「わぁーー!」
観客の女性「何だか ひととは 違うような……。」
観客の男性「何というクールさ! まるで人形のようだ!」
観客はリィカとヘレナの容姿に少しざわめいていた。
リィカ「初メニ 村長さんノ ご挨拶 デス!」
村長「バルオキーの皆 今日は集まってくれて ありがとう。今日は何もかも忘れて 盛大に楽しんでくれ。ここに『緑の村の音楽祭』の開催を 宣言する!」
観客「うぉーーー!!!」
アルド「観客の盛り上がりがすごいな!」
ヘレナ「では村長には そのまま 今日のお祭りを 盛り上げてくれる 素敵なゲストを 紹介してもらうわ。」
村長「うむ。今日のお祭りを この村の皆と共に 盛り上げてくれるお客様を わしが招待した。皆 拍手でお迎えしてほしい。」
観客「わぁーー!」
村長「まず 一組目は 炭鉱の村ホライの皆様じゃ。」
観客「パチパチパチパチ。」
そう言って舞台に上がったのは、なんとヘンリーだけでなく、マーロウやテリー、レベッカにヒルダ、それにモナもいた。
アルド「ヘンリーだけじゃなかったのか!」
マーロウ「皆さん こんにちは! 僕は西にある炭鉱の村 ホライの村長 マーロウと申します! 後ろにいるのは村の皆です。」
ヘンリー「吟遊詩人のヘンリーだ。」
レベッカ「かまど屋のレベッカだよ。」
ヒルダ「爆弾技師のヒルダよ!」
テリー「木こりのテリーだ。それと娘の……」
モナ「モナは モナでーす!」
マーロウ「今日はお招きいただき ありがとうございます! 村の皆も楽しみにしていました。実はホライは 一度廃村になったのですが そちらにいらっしゃる アルドさんのおかげで もう一度村として出発することができました。ありがとうございます。」
観客「パチパチパチパチ。」
アルド「少し照れるな。でも オレは何もしてないよ。皆の夢が村を救ったんだ。」
マーロウ「アルドさん……。ありがとうございます。僕たちは 村同士の交流をもっと増やしていこうと思っています。ここから少し遠いですが ぜひホライにも遊びに来てください。今回は炊き出しの場で 村の料理を作らせていただきますし ヘンリーも詩を披露しますので どうかお楽しみください!」
観客「わぁーー!」
村長「ありがとう。それでは 2組目は 魔獣の村コニウムご一行じゃ。」
ホライの面々と入れ替わりに入ってきたのは、なんとアルテナだけでなく、ギルドナとヴァレス、ミュルスもであった。
観客「ざわざわ……。」
観客の男性「ま 魔獣って この前フィーネを連れ去った あの魔獣じゃないか!」
観客の女性「何でこんな奴らを……。」
観客は冷たく今にも帰れと言わんばかりの雰囲気だった。舞台にいるアルテナたちも気まずそうにしている。するとギルドナが口を開いた。
ギルドナ「バルオキーの皆様 まずはこの祭りへの招待の礼を述べる前に 詫びさせてほしい。」
観客「……!」
魔獣の口から思わぬ言葉が出てきて、村の皆は一瞬で静かになった。
ギルドナ「私はギルドナ。かつて魔獣王と呼ばれた者だ。こちらは妹のアルテナと臣下のヴァレスとミュルスだ。」
アルテナたちは、静かに一礼した。
観客の女性「ギルドナってまさか ミグランス城を襲った奴じゃ……?」
観客の男性「でも あれはアルドが倒したんじゃなかったのか?」
村の皆は動揺を隠せないでいる。
ギルドナ「かつて 我々は人間と戦い それによりたくさんの人が亡くなった。この村でも 村長の孫娘フィーネを連れ去った。」
ヴァレス「……。」
観客の女性「やっぱりあの時の……!」
観客の男性「そんな奴らが 今更何の用だ!」
村の皆は怖れと怒りが混ざったような様子だ。
ギルドナ「だが 俺はフィーネのおかげでもう一度生まれ変わることができた。アルドやその仲間たちのおかげで 変わることができた。」
観客「……。」
ギルドナ「俺は 俺たちは 昔の人間を襲っていた時とは違う。だから これまでのことを謝らせてほしい。」
観客の女性「そんな 今更謝られたところで……。」
観客の男性「一度人間を襲った奴らの言うことなんて 信じられるか!」
ギルドナ「わかっている。謝ったからといって 許されるものではないし 詫び一つで許されるとも思っていない。だが 詫びそのものには意味があると思っている。」
アルド「ギルドナ……。」
ギルドナ「今までの所業 謝らせていただきたい。そして まだ 俺のことをこの臣下のように魔獣王だと慕ってくれる者もいる。俺の力が及ぶ魔獣には 戦いを止めさせ そうでないものは 人間と共に戦うことを誓おう。本当にすまなかった。」
そうして、ギルドナたちは深々と頭を下げた。心が揺れ動く村の皆に、居ても経ってもいられなくなったアルドは、その場に立って言った。
アルド「みんな ギルドナの言っていることは本当だ。それに オレは魔獣の住む村に行ったことがあるけど そこの様子は オレたちと何にも変わらなかった。」
ギルドナ「アルド……。」
アルド「それに 魔獣たちがやって来たことは 許されないかもしれないけど 魔獣に対して 人間がやって来たことも 許されることではないと思う。」
ギルドナ「……。」
すると、観客の一人が言った。
観客の男性「確かに アルドの言うように 俺たちが感じてきたような怒りや憎しみを 魔獣も同じように感じてたのかもしれないな……。」
観客の女性「そうね。戦っていい気分になる奴なんて いないもんねぇ……。それに あの魔獣の瞳 信じてもいいんじゃないかい……?」
アルド「みんな……。」
観客の男性「みんな仲良く平和に暮らすのが一番だよな……! なあ 皆!」
観客「おぉーー!!」
先ほどまでの冷たい視線はもはや見る影もなかった。
ギルドナ「皆様 本当にありがとう! そして 遅くなったが 今回この祭りに招待いただき感謝する。また 今日は村でしか食べられな料理を振る舞うし 妹アルテナも出演する。どうかお楽しみいただきたい!」
観客「わぁーー!!」
村長「ありがとう。やはり 招待して正解だったわい。さて 3組目は 王都ユニガンご一行じゃ!」
ギルドナたちと入れ替わって入ってきたのは、なんとアリアの他に、王国騎士団のアナベルとディアドラも来ていた。しかし、謎のフードの男もそばにいた。
観客の男性「あのフードは誰だ……?」
観客の女性「騎士団が何もしないってことは 悪い人ではないんじゃない……?」
会場がざわつく中、フードの男は前に来ると勢いよく、フードを取った。なんと、そこにいたのは、ミグランス王だった。
アルド「み ミグランス王!?」
観客の男性「おい 嘘だろ? ミグランス王だ!」
観客の女性「本物よ! 王様だわ!」
観客はざわついている。
ミグランス王「バルオキーの民たちよ! 息災であったか? 私は当代のミグランス王である。今回はこのバルオキーの音楽祭にお招きいただき、村長殿には感謝している。」
観客「うぉーーー!!!」
ミグランス王「後ろにいるのは王国騎士団の騎士 アナベルとディアドラだ。そして こちらにいるのは 当王国の国立劇場の歌姫 アリアだ。」
紹介された3人は深々とお辞儀をする。
ミグランス王「私は様々な危機に直面したが そのどの場面にも そこにいるアルドがいた。そして アルドのおかげで その全てを解決することができた。そして 先のオーガ族との戦いでは先ほどいた魔獣王 いや ギルドナも尽力してくれた。本当にありがとう。」
観客「パチパチパチパチ。」
ミグランス王「今日は ユニガンで提供されている料理を 提供する。さらに 歌姫アリアが 歌を披露することになっている。皆 存分に楽しんでくれ!」
観客「うぉーーー!!!」
村長「ありがとうございます。来賓は以上じゃ。」
村長の言葉を受けて、リィカとヘレナが出てくる。
リィカ「ゲストの紹介カラ 感動と興奮デ 感情ユニットが破裂しソウ デスノデ!」
ヘレナ「でも 本番はここからよ リィカ。」
リィカ「ハッ! ソウデシタ! それでは 次に案内 デス!」
ヘレナ「そこの石像の前で ホライ コニウム ユニガンの3か所の料理の炊き出しを 行っているわ。無くなり次第終了だから 気を付けることね。」
リィカ「配られた 食器ハ そのまま アメニティとして 持ち帰レル ヨウデス!」
ヘレナ「あといくつか道が封鎖してあるから そこも気を付けることね。」
リィカ「デハ 早速 本番と 行キマショウ!」
こうして、ついに祭りが始まった。
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リィカ「トップバッターは 炭鉱の村ホライの吟遊詩人 ヘンリーさん デス!」
ヘレナ「どんな唄を聞かせてくれるのかしら? それでは お願いね。」
司会と入れ替わり、舞台の中心に置かれた椅子にヘンリーは腰かけた。
ヘンリー「やあ 私はホライの吟遊詩人 ヘンリー。今日は 皆さんに 私が出逢った中で 一番すてきな村の唄を聞いてくれるかな。」
観客「パチパチパチパチ。」
そういうと、ヘンリーは竪琴をかき鳴らして、唄い始めた。
ヘンリー「私は 先達の詩人の唄を頼りに 村だったところに行きついた。私は そこで 臆病な少年と 猫を連れた剣士と出逢った。なんでも 村を復興させることが 夢なんだそうだ。」
「私は そこで 暮らすことにした。すると すぐに 村には人がやって来た。そんな村に 行き倒れた身寄りのない女性が現れた。意識もない。看病の末 元気になった女性は しばらくして 美しい 青い花を植え始めた。彼女の来訪で 村は華やいでいった。」
「やがて 村の木こりと 付き合うようになり 2人は結婚した。何しろ 村で初めてのことだ。村人総出で 祝ったんだ。そして 月日は流れ 子どもも生まれた。」
「しかし 神様は人をずっと 幸せにはしないようだ。その女性は 持病を患っていた。月日が経つにつれて その病は 刻一刻と女性をむしばんでいった。そして 限界まで近づき 何も見えなくなった女性は 夫に言った。寄る辺の無い私に 家族というものを 教えてくれてありがとう と。」
「それきり 女性は目を覚ますことはなかった。夫は普段の飄々とした様子からは 想像もできないくらい悲痛な泣き声で咽び続けた。未だ幼く 死という概念を理解できない子どもは そんな父の背中を じっと見続けていた。」
「彼女の亡骸は 村人たちにより 彼女の愛した花の下へと 丁重に埋葬された。その早すぎる死を悼む村人の前で 私は葬送の詩を手向けた。やがてそこに墓標が建った頃 子どもが花の世話をし始めた。子どもは父に言う。父と花を大事にすると。」
「女性の植えた花は 今も美しく咲いている。復興した遠い村で……」
ヘンリーは竪琴を弾き終わると、観客に向き直って言った。
ヘンリー「どうだったかな?」
観客の女性「何ていい村なのかしら……。ぐすっ……。」
観客の男性「ぐっ……。ちくしょう。目から 汗がどんどん流れてきやがる!」
ヘンリー「お楽しみいただけたようだね。こんなあたたかい村に行ってみたいと思ったら ホライへ来るといいよ。さて 私の唄は以上だ。」
観客「パチパチパチパチ。」
会場はスタンディングオベーションだった。
アルド「ほんといい村だよな ホライは。」
アルドも当時のことを思い出しながら聞き、目頭が熱くなっていた。ヘンリーと入れ替わって、司会の2人が出てきた。
リィカ「思ワズ アイパーツから 何か出ソウデシタ……!」
ヘレナ「あなたに そんな機能ついてないわよ。でも ほんといい唄だったわね。」
リィカ「デハ 次ノ方ノ 登場デス!」
>>>
リィカ「次に 登場するノハ ユニガンの国立劇場の歌姫 アリアさん デス!」
ヘレナ「歌姫というくらいだから 期待してしまうわね。楽しみだわ。では お願いね。」
司会と入れ替わって現れたアリアは、リュートを持って出てきて、椅子に座った。
アリア「皆様 こんにちは! ユニガンの国立劇場に所属する アリアと申します。今回は アルドさんのご出身の村だということなので アルドさんを題材にした作品を一つ持ってきました。」
アルド「オレを題材に……?」
アリア「はい! 実は アルドさんの雄姿を描いたオペラが最近できたんです。題して「古の魔族と猫を連れた勇者」! 今回は その中の冒頭にある 吟遊詩人が魔族と勇者の戦いを 唄で話す部分を聴いていただこうと思います。ただ 歌詞は 普段使っている言葉ではないので 意味は分からないかもしれないですが……。」
そういって、アリアはリュートを構え、深呼吸をすると、先ほどまでとは別人のような勢いと熱量でリュートをかき鳴らし、唄い始めた。
「エンディー オレスィファーレ~~
コデリー リリファレセリ~~ レスティ
オ~~ティ~~バーールセティアー
ロ~~~ティ~~~」
すると、急にリュートを止めて、続けた。
「リーマーボーン ディモレーナテール
ナツィオーンボーリーマナテ~~~ル
ナーモーンディーラクウィー ウォーサーゲーリーク
カストーミーニサ カスウォーミーニサ カスウォーミーニサベ~~~」
そして、また楽器を持ってかき鳴らしながら続けた。
「ナーンディモレートー ナーンディモレートー
カースティーモーリョーティ~~~サ~~~レーー」
「カーツィーフローレー カーツィーフローレー」
「ウーエンダーティーフローーリーアー
ディーモーレーラスシフォー メモリースカー
リーーリーーリーモーリーローーサーーリーンマーリー
ローティル ローティル ローティル ローティル
ローエモーロ ローエモロ ローエモーロ ローエモーロ
ローエーモーローリーモーストーレー
リーモスシーングローレ リーモスシーングローレ」
「ナーンディモレートー ナーンディモレートー
カースティーモーリョーティ~~~サ~~~」
「レ~~~~ッ!」
唄い終わり、少しの沈黙を挟んで割れんばかリの拍手になった。
アリア「ありがとうございます! お楽しみいただけましたか?」
観客の男性「ああ! アルドの雄姿が目に浮かぶようだったよ!」
観客の女性「静かそうな見た目して すごい迫力だったわ!」
アリア「お楽しみいただけたみたいで よかったです! もしよろしければ ユニガンの国立劇場にも 遊びにいらしてくださいね! ありがとうございました!」
観客「パチパチパチパチ。」
アルド「歌を聴いただけで オーガとの戦いを思い出したよ。」
この後、ラビナが唄、パリサが演奏、シエルが歌を披露し、どれも大盛況だった。
>>>
リィカ「いよいよ 残り4組ト なりマシタ!」
ヘレナ「まだ 楽しむ元気は残っているかしら?」
観客「うぉーーー!!!」
ヘレナ「その調子よ。じゃあ 次の組行きましょうか。」
リィカ「続いてハ サイラスさんト 村長さん デス!」
アルド「えっ! 爺ちゃんも出るのか!? それも サイラスと一緒に!?」
ヘレナ「発起人自らがご登場ね。聞かせてくれるのは 輪唱かしら? 楽しみね!」
リィカ「デハ お願いシマス!」
司会の2人と入れ替わりに入ったサイラスと村長は、身一つで出てきた。
サイラス「拙者は サイラス。気ままな 浪人者でござるよ。今は 故あってアルドの世話に なっているでござる。今回は 拙者の故郷で唄われていた 故郷をたたえる歌を 村長殿と 互いの村のことについて一緒に唄いたいと思うでござるよ!」
村長「皆は手拍子を頼む。叩く間合いはこうじゃ。パン パン パパン パン!」
村の皆もやってくれて、リズムが安定してきた。
サイラス「いい感じでござるな! そのままいくでござるよ!」
すると、観客のリズムに合わせて歌いだした。
サイラス「つちと やまとに いだかれた~ くにに ながるは かぜのうた~」
村長「へいち しっちに かこまれた~ むらに ひびくは ねこのこえ~ ほい!」
2人「よっこら どっこい よよいのよい あそ~れ よっこら どっこい よよいのよい!」
村長「むらを まもるは けいびたい~ せかい まもるは わしのまご~」
サイラス「かぜに まわるは かざぐるま~ むらを まわるは つちにんぎょう~ そい!」
2人「よっこら どっこい よよいのよい あどした よっこら どっこい よよいのよい!」
サイラス「たびの つきよに おもいはせ~ つきを さかなに いわいざけ~」
村長「むらで まごらの すがたみて~ いまは へいわな ときとしる~ ほい!」
2人「よっこら どっこい よよいのよい もいっちょ よっこら どっこい よよいのよ~~~い!」
そのままの流れで終わると、サイラスは言った。
サイラス「ありがとうでござる! お楽しみいただけたでござるか?」
観客の女性「コレ 遊びに使えそうね! 子どもに 教えなきゃ!」
観客の男性「村長も結構やるじゃねぇか! 惚れ直したぜ!」
村長「ありがとう! 引き続き楽しんでいってくれ。」
観客「わぁーー!!」
アルド「予想以上に大盛り上がりだったな!」
そして、入れ替わり、司会の2人が来る。
リィカ「コレをやれバ 大盛り上ガリ 間違いナシ デスノデ!」
ヘレナ「ええ。私も今度ガリアードとやってみようかしら?」
リィカ「デハ 次の方ノ 登場デス!」
>>>
リィカ「続いてハ フィーネさんト アルテナさん デス!」
ヘレナ「親友コンビが出てきたわね。楽しみにしていた方も多いんじゃないかしら?」
リィカ「デハ お願いシマス!」
入れ替わりに入ってきたフィーネとアルテナは、舞台の真ん中に立つと言った。
フィーネ「こんにちは 皆! フィーネと」
アルテナ「アルテナよ!」
フィーネ「私たちは 『天使の唄』を歌いたいと思います!」
アルテナ「この唄は 多分私たちしか 唄えないものだと思うわ!」
フィーネ「2人で唄うのは 初めてのような 1度あったような感じがするね。少し短いけど 精一杯唄います!」
アルテナ「よろしくお願いします!」
2人は顔を見合わせてうなずくと、唄い始めた。
「アアアーラララーーアア~~ ララララーアーラ~ラーア~~
ウルルルーア~~ ラーアーラーアアアー アーラ~~ラララア~ア~~」
フィーネ「 アーアーアア~~ア~」
アルテナ「 オーーーオーーウ~~」
「ラララー アーラーララーアー ラーーーラーラ~~~ー ラ~~~」
唄い終わり、フィーネとアルテナが恐る恐る目を開けると、観客は皆余韻に浸っていた。しばらくして、大きな拍手が会場を包んだ。
フィーネ「私たちの唄 どうだったかな?」
観客の女性「まるで 天使に優しく包み込まれたようだったわ……!」
観客の男性「人と魔獣の本当の在り方を見たと思ったよ……!」
アルテナ「……! ありがとう 皆! この後も楽しんでってね!」
観客「わぁーー!!!」
アルド「この唄を聴いたら 人と魔獣の繰り返された戦いが ようやく終わったんだって そう思えるな……。」
そして、入れ替わり、司会の2人が来る。
リィカ「アンドロイドでもわかるホドの エンジェル・ソング デシタ!」
ヘレナ「何かに守られたような そんな癒しの歌だったわね。」
リィカ「デハ 次の方ノ 登場デス!」
>>>
リィカ「続いてハ シエルさん ラビナさん パリサさんの3人 デス!」
ヘレナ「シエルのハープと唄 ラビナの唄 パリサのリュート……。時代を超えたここでしか聞けない 貴重な演奏 私も楽しみだわ。」
リィカ「デハ お願いシマス!」
司会と入れ替わって、パリサとシエルは椅子に座り、ラビナは真ん中に立った。
ラビナ「やっほー! またまた登場 ラビナと」
シエル「シエルちゃんと」
パリサ「……パリサ……です……。」
観客「うぉーーー!!!」
先ほどの一人での演奏で、観客の心を掴んだ3人は、もう人気者になっていた。
ラビナ「今回は あたしの 大好きな曲を シエルちゃんのハープと パリサのリュートで 唄うね!」
シエル「ボクたちの唄声 楽しんでくれると嬉しいな!」
パリサ「……よろしく……お願いします……。」
挨拶を済ませると、シエルとパリサは楽器を構え、ラビナは深呼吸をした。そして、3人がアイコンタクトを取ると、シエルとパリサが演奏を始め、その後ラビナが唄い始めた。
ラビナ「るら~ああ らあらら る~るらら~ る~るる る~らら ら~ああ~
るら~ああ~ らる~ら~あ~る~ ら~あああ~~ ら~~ららら~~
ら~ら~ ら~ああ らあららら~ ららら~ああ あ~あ~ら~ら
るらら~る ら~ら~ら~ら~あ~ るらら~ららる~ら~ら~
るらら~~~ ららる~ら~ ら~」
優しい唄に観客は聞き惚れていた。そして、最初に戻りもう一度、同じ部分を唄おうとすると、予想外のことが起きた。シエルが唄いだしたのだ。
シエル「るらら~ら らあらら るらら~ るるら~ら らああら らああ~
るらああ~ら~~ るらああ~~ らあああ ら~らら~ ら~~~らあら~」
驚くことに、シエルは唄の調や長さに合わせて、ラビナの唄に重なるように唄っていた。ラビナは最初驚いていたが、すぐに元からその予定であったかのように唄った。そして、ラビナの唄の盛り上がる部分で、今まで戸惑いうずうずしていたパリサも、とうとう唄いだした。
パリサ「ラ~ラ~ ラ~~ラ~~ ラ~ラ~ラ~ラ~~ラ~~
ラ~ラ~ラ~ラ~~ラ~~ラ ラ~~ララ~ラ~ラ~~~
ララ~~ララ~ラ~ラ~~~」
パリサもシエルと同様、ラビナの唄の調や長さに合わせて、重ねるように唄っていた。シエルの魅了される唄、ラビナの優しい唄、パリサの悲しい唄、この3つの歌が複雑に絡まり合い、感動的な思いのこもった唄が辺りを包んだ。
シエルとパリサの楽器の演奏が止まると、観客は涙しながら3人を拍手で包み返した。
ラビナ「ありがとう! 私たちの唄 どうだったかな?」
観客の女性「なんか よくわからないけど とても感動的だったわ……!」
観客の男性「最初には言わなかったのに 3人で唄うなんて 粋な演出だねぇ!」
シエル「皆も楽しんでくれてるみたい! ボクもとても楽しかったよ!」
ラビナ「まさか 2人が あとから入ってくるなんて 思わなかったよ!」
シエル「えへへ。なんか唄いたくなっちゃったんだよね~。パリサさんも?」
パリサ「……2人が唄っているのを……見て……唄いたく……なりました……。」
シエル「やっぱり 楽しくて すっごい 奇跡が起こったね!」
パリサ「……はい……!」
ラビナ「改めて 聞いてくれてありがとう! 最後まで楽しんでってねー!」
観客「うぉーーー!!!」
アルド「3人とも 一人で聞くと色々すごいけど 3人で聞くと こんなに感動的な唄になるなんて思わなかったよ!」
シエルとパリサは舞台の後ろに下がり、ラビナと交代で司会の2人が入ってきた。
リィカ「ステキな唄ニ システムの色んなトコロで エラーが 起キソウ デス!」
ヘレナ「まるで 3羽の鳥が さえずりあっているかのような美しさだったわね。」
リィカ「デハ 次の方ノ 登場デス!」
>>>
リィカ「いよいよ 最後の方ノ 登場デス!」
ヘレナ「最後は誰かしら?」
リィカ「最後は シエルさん パリサさんの2人と メリナさん ミストレアさん ミルシャさんの5人デス!」
ヘレナ「一番の大所帯ね。先ほどの2人に まだ唄声を聞いてない3人が入ると いったいどうなるのか 未知数ね。」
リィカ「デハ 最後の方 お願いシマス!」
司会の2人と入れ替わりに、メリナ・ミストレア・ミルシャが入ってきた。
メリナ「皆さん こんにちは。メリナと」
ミストレア「ミストレアと」
ミルシャ「ミルシャだよ!」
メリナ「私たちは劇団の者なの。今日は劇団の衣装で来たわ。」
アルド(げ 劇団!? ま まあ 確かにこの時代に 宣教師はともかく 翼人と人魚がいるってわかったら 色々と面倒か……。)
ミストレア「この羽根も つ……作り物です! でも あんまり見ないでくださいね! 破廉恥なので!」
ミルシャ「ウチのヒレも 作り物なんだー!」
メリナ「今日は エルの唄という唄を この3人に 先ほど演奏してた 2人を加えた5人で 唄うわ。」
ミストレア「実は 複数で唄うのは 初めてなんです。」
ミルシャ「楽器の伴奏を付けて歌うのも 初めてなんだよねー。」
メリナ「だから 私たちでも どうなるのかわからないの。」
ミストレア「でも おそらく 一生に一度しか聞くことがないと思います!」
ミルシャ「それこそ アルドみたいな人じゃないと ムリだよねー!」
メリナ「それくらい 貴重な機会だわ。短めだけど 心して聞いてちょうだい。」
そして、互いにアイコンタクトを取ると、シエルとパリサの演奏が始まった。前奏が終わると唄が始まった。
メリナ「セーノテー マリーキヤーレ イルオーエルキーニヤーー」
ミストレア「キーエフィー メラーフィイーヤ イレウーアルティニーヤーー」
ミルシャ「メネティー エルスィファー エルシルファ レードニー レティヤー
シェレミーー」
3人「ソーテ ミーヤ パシェミ ティアルヤーーー」
いよいよ唄が盛り上がってきたところで、思わぬことが起きた。メリナの唄に対して、ミストレアとミルシャがハーモニーを唄いだしたのだ。
3人「ゼーリヤイルリ テーネツィ プルーフィレルシェ ネースィー
クァーリャスタリア メーレンスィー トーアーンナー ミヤーンナー
テルーーシャーー ラーーーフィーアーーー」
そして、後奏が終わり、演奏が終わった。観客は荘厳な唄に圧倒されていたが、すぐにスタンディングオベーションになった。
メリナ「ど どうだったかしら?」
観客の女性「まるで 昔の聖歌を聴いているようだったわ!」
観客の男性「盛り上がった所なんかは 空と海が大地を挟んでいるようだったよ!」
ミストレア「喜んでもらえたみたいですね!」
ミルシャ「それにしても まさか ハモるなんて 思わなかったよ!」
メリナ「急にするから 驚いたわよ。」
ミストレア「不思議と声を出したら ハーモニーを唄ってました……。」
メリナ「まあ 皆が楽しんでくれたのなら それでいいわ。」
観客「わぁーー!!!!!」
アルド「3人で聞くと より迫力があるな!」
5人と入れ替わって、司会の2人が入ってきた。
リィカ「禁じラレシ エンシェント・ソング……。素晴ラシかった デス!」
ヘレナ「ええ。まるで 教会音楽のようだったわね。」
リィカ「さて 演目ハ 全て 終了 デス!」
ヘレナ「最後に 村長さんからの 締めの言葉よ。」
すると、村長が舞台にあがって言った。
村長「みんな これでお祭りは終わりじゃが 楽しんでもらえかの?」
観客「うぉーーー!!!」
村長「喜んでもらえたようで 何よりじゃ。それじゃあ アルド ちょっと上がっておいで。」
アルド「えっ オレ!? わ わかった。」
アルドは、村長に言われて舞台へとあがった。
村長「今回 この祭りにおいて 招待状を渡してくれたのも 出演者を集めることができたのも 炊き出しができたのも 企画してすぐにできたのも 全てアルドの協力なくては できなかったことじゃ。アルドに拍手を。」
観客「パチパチパチパチ。」
アルド「いや もともと 爺ちゃんが 村の皆が この状況で 暗い顔をしてるのを見て そういうのを忘れて 楽しめるようにって企画したんだ。だからすべての始まりは 爺ちゃんなんじゃないかな? だから拍手を送るなら 爺ちゃんの方だと思うぞ?」
観客「パチパチパチパチ。」
村長「うむ。ありがとう。皆のおかげで 無事祭りを終えることができたのじゃ。皆 互いに拍手を送り合うのじゃ!」
観客「パチパチパチパチ。」
村長「では 片付けは 明日にでもするとして まだ料理も残っているし 普段会えない お客様も来ている。この後も 楽しんでほしい。」
観客「わぁーー!!!」
村長「ということで 以上で 「緑の村の音楽祭」終了じゃ!」
観客「うぉーーー!!!」
こうして、音楽祭は終わりを告げた。この後も、炊き出しを食べながら、様々な交流を楽しみ、一日を終えた。
翌朝、エイミは村の誰よりも早く、目を覚ましていた。
「ふぁ~。やけに 早く起きてしまったわね……。……ん?」
ふと気になって、外を見てみると、昨日の祭りの跡が朝日に照らされて、輝いていた。すると、エイミはふと思いついた。
「あっ 今だったら……!」
そうして、エイミは急いで部屋を飛び出し、離れたところに停めてある合成鬼竜にあるものを取りに行き、バルオキーに戻ってきた。
それから数分後、アルドは何かの音で目が覚めた。
「ふぁ~あぁ~。いったい 何の音だ……?」
音はどうやら舞台の方で聞こえるようだ。アルドは恐る恐る、気づかれないように向かうと、そこにいたのは、エイミだった。しかも、エイミは青いギターを持って、演奏していた。
「エイミ!? あれだけ弾くのを嫌がっていたのに……。でも いい曲だな……。」
よく見ると、エイミの横にはヴァルヲがうずくまっている。
「今は 声をかけない方がよさそうだな。」
アルドはそう思うと、遠くからエイミの様子を見ていた。ふと気がつくと、家中の窓が開き、そこから村の皆が、エイミの演奏に聞き惚れていた。
「音楽って オレはなにもできないけど でも 本当にいいよな。色んな人とつながり合って 色んな気持ちになって……。」
アルドは舞台を見ながら続けた。
「音楽って もしかして 魔法なのかもな。」
音楽であふれた一日だったバルオキーは、朝日に照らされる中、優しいギターの音色が響いていた。
開催! 緑の村の音楽祭!! さだyeah @SADAyeah
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