第89話 姉の受難 16
「全く、本当に手のかかる弟達だわ」
ここ数ヶ月の出来事を思い返すと、思わずため息を尽きたくなる。
これも全ては春樹のせい。あの子が玲奈と付き合う為に自分を改造してくれなんて言わなければ、こんなことにはなってなかっただろう。
「美鈴さん、どうしたんですか?」
「何でもないわよ!?」
「もうすぐ駅に着くので、準備してください」
「わかったわ」
私達が今日電車に乗っている理由、それは春樹の試合を見に行く為である。
バレー部の試合が終わると、玲奈と一緒にサッカー部の試合を見る為に電車に乗っていた。
「春樹と付き合ってどう? 順調?」
「凄く順調です」
「それはよかったわ。どこか出かけたりしたの?」
「どこも出かけてないです」
「ちょっと待って!? 付き合ったのにまだ2人でどこにも出かけていないの!?」
「はい。今はお互い部活が忙しいので、それが終わったら2人で遊びに行こうって話しています」
「そうなの‥‥‥なんか貴方達ゆっくりしてるわね」
「はい」
確かにバレー部もサッカー部も夏の大会真っ最中だ。
2人っきりでどこにも遊びに行けないのもわからなくもない。
「学校は? 春樹と一緒に帰ってるの?」
「帰ってますよ。でもそれは美鈴さんも知ってると思うんですけど?」
「そうね。私も貴方達と一緒に帰ってるから、それぐらいわかるわ」
春樹と付き合う前私と玲奈の2人で帰っていたけど、今はそこに春樹もいる。
結局登下校時私と玲奈と春樹の3人で帰っていた。
「あれ? これって付き合う前と何も変わってないんじゃないかしら?」
「何が変わってないんですか?」
「ごめんなさい、何でもないわ」
もしかして春樹と玲奈が2人っきりになれないのって私のせいじゃないかしら。
いや、それは違う。このくそ忙しい時に付き合った春樹が悪いのだから決して私は悪くない。
「春樹とは毎日電話もしてるし、お昼も春樹や楓達と食べることが増えたし、私今すごく幸せです」
「玲奈が幸せなら、それでいいわ」
最近春樹が頭を抱えているのを見たけど、たぶん私が考えていた事と同じだろう。
たぶん玲奈と2人きりになれることが少ないから悩んでいたんだ。
「さすがに春樹が不憫かしら」
でも自分で玲奈との時間を作らない春樹が全て悪い。
だから私が気を利かせなくても大丈夫なはずだ。
「美鈴さん?」
「何でもないわ。試合会場は次の駅よね? 早く行きましょう」
「うん」
駅を出てお昼ご飯を買いに向かう。試合時間までまだまだあるので、少しぐらいの寄り道は大丈夫だろう。
「玲奈、今日のお昼はどこに行くの?」
「今日行く所はハンバーガーショップです」
「またハンバーガーショップに行くの!?」
「今日はフィッシュバーガーが美味しいお店です。ポテトも色々な味の種類を楽しめる所なので、美鈴さんも満足すると思います」
「さすが、玲奈ね。いつも私を飽きさせないお店を見つけるなんて」
「はい。だって私、美鈴さんの事が大好きですから」
「ぶはっ!?」
「どうしたんですか!? 美鈴さん!?」
「大丈夫よ。ちょっと鼻血が出ただけだから」
「それは大丈夫じゃないですよ!?」
ハンカチを鼻に当てながら、玲奈を遠ざける。
危ない危ない。今の玲奈の告白があまりに衝撃的すぎて、鼻血が出てしまったわ。
「大丈夫だから。早く商品を選んで、試合会場に行きましょう」
「わかりました」
「それなら玲奈、私と春樹どちらが好き?」
「それはもちろん春樹です!」
「わかったわ。後で春樹を亡き者にすればいいのね」
「何故!?」
私がやるべきことはわかった。後で春樹には制裁を加えよう。
「それじゃあ玲奈、早く買いましょう」
「はい」
この玲奈のまぶしい笑顔は絶対に守る。もし春樹がこの笑顔を曇らせる事があれば、真っ先に殴りに行こうと思う。
「美鈴さん、早く行きましょう」
「玲奈、そんなにせかさないでよ」
玲奈に手を引かれながら、私は試合会場へと行く。
後で玲奈と手をつないた事を春樹に自慢しよう。
そう心に誓いながら、春樹がいるサッカーの試合会場へ行くのだった。
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ここまでご覧いただきありがとうございます。
これでこの作品は終了となります。
2章として美鈴の事を掘り下げたものを書くか考えましたが、きりがいいのでここで終わりにしました。
もしこの先の話を読みたいという要望がありましたら、感想等をいただければ嬉しいです。
最後になりますが、私の拙作をここまでご覧いただきありがとうございます。
フォローや評価、感想等をいただけたおかげでここまで頑張れました。
また皆さまに楽しんでいただける作品お届けできるようにがんばりますので、これからも応援よろしくお願いします
姉プロジェクト~~地味で陰キャな俺が美少女の幼馴染と付き合うまで 一ノ瀬和人 @Rei18
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