東の廊下
あらマルデリータ、やっと起きたの?
あらマルデリータ、おはようございます
ええ今あのお方の話をしていたの
ええ今目の潰された方の話をしていたの
ええと、エリーザ様のことでしょうか?
そうそう
ええそう
それからあの坊やのことも
あたくし達を馬鹿にした子
酷いわこんな可憐な少女を貶すなんて
許せないわこんな清らかな絵画に
ふん、わしはあの少年は見る目があると思うがな
あら伯爵様、そんなこと言っていいんですの?
一匹狼の伯爵でしたっけ? 確かに心眼をお持ちでしたわね
うぐ……
それはさておいて、エリーザ様ならすっかり回復しているわよ
あら?
あら?
それってどういうことかしら
庭師が嘘をついたのかしら
いいえ、エリーザ様は確かにあの少年に目を潰されました。赤と緑の絵の具でそれはもうぐちゃぐちゃに。
ええそうね
聞いた通り
でもそのあと少年は暫くそこに居て、泣き叫び疲れたのか神様がそうしたのかわからないけど眠りについてしまって。エリーザ様は手を伸ばして、黒い黒い手が伸びて、そこで転がっている少年を包み込んで、後に残ったのは少年の落した平筆が一本だけ。エリーザ様はすっかり元通り元気になって、前よりずっと朗らかに微笑んでいらっしゃったわ。
あらあらあら!
まあまあまあ!
それってつまりそういうことね!
それってとっても素晴らしいことよ!
すてきだわ
ええとても
今度是非ゆっくりお話ししてみたいわ
死んでもお友達にはなりたくないわ
いい気味だわ
お可哀想にね
やっぱり少年に見る目は無かったのかしらね
違うわ、あたくし達も少年もあの方を知らなかったのよ
おお、恐ろしい。女とはいつの時代も恐ろしいよのう……
まあ伯爵様。お褒め頂き光栄ですわ
まあ伯爵様、それって誰のことですの?
いやはや、敵わん。わしはもう寝るぞ。静かにしといてくれ。嫌な夢でも見たらどうしてくれる。
そうね、もうこんな時間ですもの
太陽がすぐそこまで迫っているわ
おやすみなさい、皆様
おやすみマルデリータ
良い一日をマルデリータ
ああほら、あの方も目覚めましたわ。新しく塗り替えられた顔にご満足の様子。穏やかな一日の始まりですものね。あら、知らない足音がひとつ。怒っているのかしら。悲しそうでもあるわ。あの方の廊下にまっすぐと向かっているのね。ほら聞こえます? あら? もう寝てしまったの? ねえ。
私の明るい廊下より @nagekitutuika
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。私の明るい廊下よりの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます