物言わぬ巨大怪獣の脅威

 隕石の直撃を受け巨大怪獣化した納豆と、その進行を食い止めんと奮闘する人類の物語。
 モンスターパニック小説です。それ以外には表現のしようもないほど、まさしく怪獣映画というにふさわしい趣の作品。どうしてもタイトルのはちゃめちゃぶり、というか「納豆」の醸す圧に目が行ってしまうものの、内容そのものは意外と真面目なお話でした。いや設定面においてはやっぱりぶっ飛んでいる側面があるのですけれど(それもまたB級モンスターパニックの魅力なので)、でもストーリーの組み立てそのものはどこまでも誠実。物事の因果や動機付けと行動がしっかりしている感じ。
 これ以上ないほど〝怪獣映画してる〟ところが好きです。マンネリズムというほど類型化されたものではないにせよ、でもわかりやすくセオリーを踏んでくれる、このエンタメ性の高さ。例えば通常兵器がまったく通用しないというか、わかりやすくいうなら自衛隊が完全に「かませ犬」なところ。勇しく、かつ格好良く攻撃はするものの(ここ大事)、しかし効果はまあ案の定で、であればこそさてこの怪獣を一体どうやって撃退するか、その作戦の立案と実行にお話の焦点がまとまってゆく。この感じ。まさに怪獣映画です。怪獣自身がどんどん移動していて、でもどうしてその進路なのか、その目的が判然としないところも好き。
 あとはもう言わずもがなというか、あんまり大真面目にあれこれ語るのも野暮というもの。話運び自体はしっかりしているといっても、あくまでB級映画らしいおふざけ具合もまた魅力のひとつ(だって納豆ですよ?)。総じて、肩の力を抜いて気軽に楽しめる、大衆娯楽作品としての仕事ぶりの完璧なお話でした。