カノン成長編11 ”見殺し”の代償
負傷したアーミットを
ルーアは未だ放心状態。カノンが話しかけても、気のない
カノンはといえば、やり場のない
今後、具体的にはどう動くべきなのか。聖都シャイロンに行き、聖王より勇者として正式に認められた後のことはまだ何も決まっていない。
それでも、目指すゴールはただ一つだ。新たな魔王として生まれ変わった勇者シャインから器を奪い、再び魔王として君臨すること。そのためだけに十五年もの
野盗の
街道の関所で、デュソーがラミア伯から預けられた通行証代わりの手紙を男に渡す。二人は顔見知りらしく、特に疑われたり、調べられたりするようなこともなかった。また、デュソーと対等に話しているところを見ると、それなりに役のある人間のようだ。
男が手紙にサインを入れ、伝書鳥をシャイロン方面に放つ。
一行は一刻ほど関所の待合室で
「(シャイロンに着けばこの女ともお別れだ。この先会うこともねーし、気にするだけ
カノンは正面に座るルーアをぼんやり
アストラールに入ってからの道中は、平和そのものだった。
彼らはデュソーの姿を認めるなり、ほぼ例外なく首を垂れる。デュソーは、その彼らの頭上に右手をかざす。これは規則などで決まっているわけではないものの、英雄への尊敬の気持ちを表す、聖騎士団独自の慣習のひとつであった。
「おっさん、人気モンだな」
「昔とった
「ケケッ、すっかり自信失っちまってるじゃねーか。無理もないけど」
短い会話ののち、一行の間には再び
聖都シャイロンは大陸屈指の大都市である。
「ゴミひとつ落ちてないんだな」
「神の代理人である聖王様のお
なんとも生きづらそうな場所だとカノンは思った。
続いて、ルーアの育ての親を名乗るシスターがやってきた。
旅商人だった彼女の両親は
デュソーは自前のカバンから取り出した
人間は
「また会おう、ルーア」
デュソーのかけた言葉が唯一の別れの
ルーアもカノンの方を向くことはなかった。デュソーに軽く
「なあ、カノン。私が倒れている間に何があった? 野盗に
小さな背中を見送りながら、小さな声でデュソーが問う。
「さあ」
カノンはデュソーから顔を
ルーアの心を
魔王の意思でも勇者の印でもない何かがカノンの心を
この気持ちに何と名前を付けるべきか、元魔王には分からなかった。
聖魔逆転! 〜最悪の勇者と正義の魔王の異世界物語〜 よしかわゆきじ @yoshikawayukiji
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