幕末の動乱期を、風のごとく駆け抜けていった新撰組。
彼らの生きざまとゆくすえは、いまでは広く知られるところであるのですが――もしそんな彼らが現代日本、それも自分のうちにやってきたら?
そんなところから始まる、新撰組の人々と小野田家のみなさんとの現代スローライフ。
歯医者にチャレンジする鬼の副長、現代でもこどもたちに慕われる沖田殿、おやちょっぴりロマンスも? な斎藤殿だったり。個性的な面々が、それぞれに現代日本の生活を満喫したり、ときには冷静にみつめたり。
彼らを受け入れた、小野田家のみなさんもとてもいい人たちで、ああこのままみんなそろって平和に暮らしていってほしいなあ…とつい願わずにいられません。
「新撰組ってどんな人たち? エンタメならどんなのがいい?」という問いに、こんなに楽しい作品もあるんですよとぜひオススメしたいです。
幕末。多くの若者が閉鎖した日本を憂えて、新しい時代を夢見た時代。義や志を持って散っていった多くの若者達がいた。
中には暴れたいだけの者もいたかもしれない。お金の為に戦いに身を投じた者もいただろう。
だけど、その意味は違えど、きっと、みんなが良い時代を夢見ていたんだと思う。
ミツルさんの『新選組?困ります!』は、そんな幕末から新撰組が現代の日本に来たら? というお話だ。
黒井は読んでいて、ふと、新撰組のみんなに幕末の戦いが無意味なものだったと思われなければ良いなぁと思った。
現代における豊かさが、お馴染みの新撰組のメンバーの目にはどう映るのか?
新撰組のみんなにとって幕末が意味のある戦いであったと思ってもらえるような日本人でいたい。そんな風に思える作品。
おすすめです(*´ー`*)
新撰組がやってきた! 彼らが存在していた時代から153年後の小野田家に。どうやらタイムリープ現象によるらしいのだが……とにかく、彼らを過去へ帰さなければと決める小野田家。かくて歴史に残せぬ邂逅記が幕を開けるのだった。
基本的にゆるやかな異文化コミュニケーションもので、新撰組に詳しくない方でも安心して楽しめる内容となっているのもオススメポイントですが、設定がしっかり構築されている点は見逃せません。
中でも新撰組の身柄を預かる小野田家、実在する小野派一刀流の道場を営んでいる設定がよく効いているのです。それがあればこそ、小野田家の面々の思考や行動に厚みと説得力を持たせられているのですよね。歴史ものは史実をどう調理するかが見せ所となりますが、異邦人サイドではなく、現地人サイドを出汁にして、しかもおいしくできている作品となると希なものです。
そして新撰組の刀なき日常(彼らにとっては非日常ですが)という、これもなかなかない切り口でおもしろい!
ネタの切り口と確かな舞台設定が光る、粋な逆タイムスリップ物語、推しです!
(「“粋”のいいネタ!」4選/文=髙橋 剛)