九大入試と素因数
東大や京大などの難関大学の数学入試は、教科書の知識に加えて発想力も必要とされるので良問が多い。
数学研究部の部室では過去問マニアの成宮がそんな難関大の問題に頭を悩ませていた。それは東大でも京大でもなく旧帝国大のひとつ九州大学。
「本当は誘導つきの問題なんだけど、今回はそれなしでやってる」
「解答はどこまで進んでるんだ?」
俺が訊くと、成宮は無言でルーズリーフを見せた。
(nー1)(n+1)(
nが偶数だと左辺は奇数、右辺は偶数になり式は成立しない、よってnは奇数。
nー1,n+1,
210=2・3・5・7より、
「ここから先が進まないんだ。……いや、左辺が840の倍数で右辺が210
「つまりmは偶数」
「でも、これでどうやってnとmを求めればいいんだ? もう半分以上は進んでるのに答えが出ない」
成宮が腕を組んで唸っていると、蚊帳の外だった愛華が顔を出してきた。
「どうした愛華」
「いや、この問題どれくらい難しいのかなと思って……」
「やや難ぐらいかな。この年の九州大学の数学は全体的に難しかったみたいだよ。その次はさらに難化したらしいけど」
「受験生が気の毒に思えてきた」
確かに受験生の立場になって考えたらメンタルやられるな。……気を取り直そう。mは整数をsとしてm=2sだから、
(nー1)(n+1)(
これ、(
(
(
840
210の素因数に2はひとつしかないから、sが奇数である可能性は消える。2と奇素数だけで連続した自然数を表すことはできないからな。
sは偶数だから210
(
これが平方数ならnは40以上、
(
1680・1682=840
2・2・841=
したがって、m=2・58=116
「題意を満たす(m,n)の組は(116,41)だ」
「途中から早すぎてよくわかんなかった」と愛華。
「でもまあ、ここまで大きいと検算する気にもなれないね」
成宮はそう言って俺のルーズリーフを眺める。
「愛華、やってみるか?」
俺が冗談交じりに言うと、愛華は小さく首肯した。
「今日は全然役に立ててないからね。これぐらいはやらないと」
別に無理に貢献しようと思わなくてもいいんだけど……。
内心でそんなことを思っている間に、愛華は俺のルーズリーフで計算を進めていく。気が付くと、一番下の行に2825761という計算結果が記されていた。
彼らは数学しか勉強できない 田中勇道 @yudoutanaka
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