チョコのお返しはデートで。


3月14日。


ホワイトデーと言われる日だ。バレンタインデーのお返しをする日らしいのだが最近では、もらったものの3倍を返さなければならないらしい。元々はマシュマロやホワイトチョコレートを渡して、その名前にちなんだ物をお返しするものだったらしいが、T Vで報道されるホワイトデー特集はアクセサリーとかの装飾品。悪いがたかがチョコくらいで、なんでそんなに金をかけなきゃいけない。本来なら想いを伝えるための日だったはずが、報酬目的ならもっと完成度を上げてこいと言いたい。たかが市販のチョコレートを溶かしてまた硬め直しただけ。そんなことで3倍の報酬が得られるのなら、こんなに楽な仕事はない。大体見返しを求める時点でそこに想いはなく、ニンジンをぶら下げられた馬みたいなもの。もちろんそうじゃない人もいるのはわかっている。でも、本気で想いを伝えた人が見返りを求めることはまずあり得ない。想いのこもっていないチョコには馬ニンジン以外何も詰まってないと思う。


こういうことを自分は考えるので、うちのホワイトデーは二人別々でデートをすることだ。もちろん、自分の財布からお金は出る。でも、一緒に楽しむならそこにお金をかける価値は大いにある。本来ならホワイトデーのある週末の土日を使ってお返しをするのだが、今年は日曜日にある。二人とも当日がいいというので、今年は三人でということになった。このご時世、あまりレジャーとかは芳しくなかったので、普通に買い物に行くことになった。


え?こっちの方が使っているお金が多いんじゃないかって?いや、これはデートだから。プレゼントだから。見返りを求めてのやつじゃないから。


服屋さんから、家電量販店、雑貨屋さんや本屋さんまで。お昼を食べることすら忘れて、ひたすら二人に振り回された。時々自分への買い物もしたが自分の両手には大量の買い物袋が。まあそこそこの出費だったが、事あるごとに二人が「ありがとう」と言ってくれたので、まあいい買い物したなと思う。


例年通り、夕飯は自分が予約していた店に行くことになっている。飲食店も厳しい中だから、少し早めの時間に予約をとっていた。買い物中にそのことを思い出して、少し焦りながらそのお店に向かった。


自分が予約したのはフランス料理のコース。前に父さんが商談をする時についていった店で、おいしかったので二人を連れて行きたかった。


「ねえねえ。ワイン飲んでもいい?」


愛が自分に確認してきた。それもそのはずで、まあ、いい値段がする。車は真心が運転していたので、自分だけが飲むわけにはいかない。


「帰りにどこか寄るか。そこで、買ってあげるからここでは我慢な。」


「えー。」


少し残念そうな愛に、


「みんなで飲んだ方がいいだろ。父さん達が帰ってきたら、一緒にさ。」


うちの両親も今日は二人っきりでどこかにいっている。「久々のデートだぁ」と母さんが喜んでいた。いい歳になっても相変わらずラブラブな両親に少し憧れた。


「わかった。なら、いっぱい買ってもらお。」


「明日仕事なんだから、響かないようにしろよ。」


「大丈夫、うちでお酒弱いのは寛だけだから。」


「そうでした。」


結果的に、この後、合計8本も買わされることになった。しかもそれを1日で飲み干すという酒豪っぷりも見事だった。


料理が到着して、二人とも「美味しい」と言って食べてくれた。コースは1時間半くらいでおしまい。最後には、自分があらかじめ頼んでおいた、ケーキが登場した。


「これ、一応お返しかな。いつもありがとう。これからもよろしくお願いします。」


「はい。これからもよろしくお願いします。」


真心が答えてくれた。


「ねえ、そんなこといいから花火があるうちに早く写真とろ。」


愛に呼びかけられ、真心と愛の間に自分が入る。愛のスマホで撮影して、何枚か撮影。途中、両ほっぺに柔らかい感触があったけど、それは写真で確認すればいいか。花火が消えて、切り分けてもらった。ケーキを食べ終わり自分たちは店を後にした。来年は、もう少し凝ったものにしようかな。今年、自由に遊べなかったというのもあるけど、シンプルだと出費がえぐかった。早くコロスケどっかいけ。心の中で叫んだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

白い紫陽花 特別編  有馬悠人 @arimayuuta

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

同じコレクションの次の小説