完璧な人はいません。不安は誰にでも忍び寄る。それは技芸で埋められるものではない。近くだからこそ遠い。しかし近くだからこそ、知っているからこそ、埋まる溝もある。万能薬はありません。しかしきっかけを与える薬はある。彼らの薬が本当に誰のために効くのかは、読んでのお楽しみ。
魔法世界にも人の情はある。それは、この世界により近いからこそ、私たちの心に訴えかけ、更に異世界の情景を深める。耳の聞こえないおとうと弟子と目の見えない姉弟子。そしていつまでも成長しないかにみえる魔女。三人が集う場所には常に魔法世界の心躍る不可思議さと、絶えない人の想いとに包まれている。
弟子たちのたくらみ、そしてその結末……先が読めず、どきどきして読みすすめました。短い字数の中に、しっかりとした物語が構築されています。思いもよらぬ良品です。