おおきなマンドラゴラ

きょうじゅ

本文

 むかーし、むかし、あるところに。マンドラゴラのうかのおじいさんがおりました。あるひおじいさんがマンドラゴラのたねをまきますと、ふしぎなことに、ひとばんでおおきなマンドラゴラがそだちました。


 どのくらい大きいかと言うと、具体的には樹高が115.55メートルありました。アメリカ合衆国カリフォルニア州レッドウッド国立公園にある「ハイペリオン」と呼ばれる地球で最も背の高い樹と同じ高さです。


 おじいさんはいつもやっているようにいぬにマンドラゴラをひっぱらせましたが、マンドラゴラはぬけませんでした。そこでおじいさんがいぬをひっぱり、いぬがマンドラゴラをひっぱりましたが、やっぱりマンドラゴラはぬけませんでした。


 ちなみに余談を述べるとハイペリオンは「地球で最も高い」樹ですが、「地球で最も大きい」樹はまた別にあります。こちらもやはりカリフォルニアのセコイア国立公園というところにあり、「シャーマン将軍の木」と名付けられていて、樹高は約80メートルですが体積が1487立方メートルあるそうです。


 おじいさんがたねをまいてから、いくせいそうのひがながれたでしょうか。ゾウがカバをひっぱり、カバがサイをひっぱり、サイがクマをひっぱり、クマがサラマンドラをひっぱり、サラマンドラがまごむすめをひっぱり、まごむすめがおばあさんをひっぱり、おばあさんがおじいさんをひっぱり、おじいさんがいぬをひっぱりましたが、それでもマンドラゴラはぬけませんでした。というか、びくともしませんでした。


 事ここに至って、事態はお爺さんが住むガーストリア帝国を支配する魔王ガーストラの耳に入りました。なんとなれば、お爺さんは何かに取り憑かれたかのように一心不乱にマンドラゴラを抜こうとしているわけですが、この超巨大マンドラゴラが万一引き抜かれた場合、どれだけの悲鳴が響き渡ることになるかは何人の予測しうることでもなく、それが一体どれだけの災禍をもたらすか、お爺さんと同じ村の村人たちが恐れ、事態を上に知らせたからです。魔王ガーストラは世界一の魔法使いだから魔王と呼ばれているだけで実際には慈悲深い君主でありましたので、事態を憂慮しました。このマンドラゴラを、なるべく災いの及ばない手段と方法で始末してしまわなければならない。ガーストラはその有能なる部下である十二魔将たちを呼集し、緊急対策会議を開きました。結果として。


 まおうガーストラは、そのいのちをふりしぼってくにのすべてをサイレンスのまほうでおおいつくしました。それによっておとがうしなわれているうちに、すべてはなしとげられなければなりません。バハムートがヨルムンガンドをひっぱり、ヨルムンガンドがエンシェントドラゴンをひっぱり、エンシェントドラゴンがオーガロードをひっぱり、オーガロードがトロルキングをひっぱり、トロルキングがキマイラをひっぱり、キマイラがゾウをひっぱり、ゾウがカバをひっぱり、カバがサイをひっぱり、サイがクマをひっぱり、クマがサラマンドラをひっぱり、サラマンドラがまごむすめをひっぱり、まごむすめがおばあさんをひっぱり、おばあさんがおじいさんをひっぱり、おじいさんがいぬをひっぱりました。すると、マンドラゴラはぬけました。どれだけのひめいがどれほどのはんいにひびきわたったのか、だれもわかりませんでしたが、それをみとどけたまおうガーストラはあんしんしたようにいきたえ、そのばにたおれふしました。


 その後。魔王ガーストラの遺徳を讃え、その御霊を弔うための盛大な儀式が執り行われました。超巨大なマンドラゴラは魔法で防腐処置を施され、そのままの姿で宮殿の一角に飾られました。そして末永く、観光客の目を楽しませ続けたということです。


 おしまい


 


 


 

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おおきなマンドラゴラ きょうじゅ @Fake_Proffesor

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