第2話

 どうやら、俺は……いや、俺は本当に異世界転生してしまったらしい。

 この世界ではどうやら魔法と呼ばれる――――まあ異世界じゃあ常識みたいなモノがたくさんあるらしい。そして、そんな何でもアリ、異世界ファンタジーな世界は危機に瀕していると……しかし、それは魔王や魔物といったファンタジーではなく、資源の枯渇という、如何にも現実的な危機であった。

 そこで登場したのが魔法を使う道具、通称『魔法具』。

 その魔法具で、いわゆる電気みたいな、いやそれよりもヤベェのを作っちゃおうって話だが……それを使うにはとんでもない魔力が必要らしい。そんで、俺たちに助けを……というわけでもなく、魔力がないなら他の世界から持って来れば、実質無限じゃん?!永久機関じゃん!?異世界人を魔力供給源にして魔法具使うべ!って話のようだ。

 なんっつう理不尽。しかしどうすることもできない俺たちは、まずは魔力数を計るってことで、順番に牢で待たされているということだ。


「……ねぇ、佐々木くん。私たち大丈夫かな?」


 そう話しかけるのは希さん。俺の天使。


「さあ……でも、あいつらの話が本当なら俺たちはどう転ぼうが魔力供給源、もとい奴隷ってことになる……」


「ど、奴隷!?」


 おっと、怖がらせてしまった。ごめんよ。


「ただ、本当ならって話だけど……」


「?……それどういうこと?」


「言ってたでしょう、彼ら。資源が枯渇してて、それの対策のための魔法具。だけど魔力が足りないって……それじゃあ、俺たちはどう呼び出されたんだろうね。足りなり魔力で、足りない資源で?異世界から?足りないんならそんなことしてる暇もないんじゃないのかな、それとも、案外異世界召喚の魔力消費は少ない……?」


「……?」


 軽く説明したつもりだったが、自分の説明が悪かったのだろうか。希さんは不思議そうな、困った顔をしている。それとも異世界知識は意外とオタク知識なのか!?失敗した!


「次、そこの二人……出てこい」


「……!!」


「うぅ……」


 いつの間にか順番が回って来たのか、俺と希さん、二人が同時に呼ばれる。

 甲冑を付けた兵士に囲まれ、指示通りに進んでいると……そこは如何にも王室、っていう感じの小奇麗な部屋だった。


「さて、これで何人目でしたっけ……」


 その玉座に座っていたのは、あの時の声の主――――俺たちをここまで兵士を使って連れてきた、少女だった。


「……まあいいです。さて、お二人には今からそこの水晶玉に触れて、魔力を測ってもらいます」


「魔力……」


「はい!その魔力は100が大体一般人ほど、1000で魔術師級と言われています……あなたたちは魔力数によって、どの魔力供給源になるのかを決めるのですが……ななな、なんと……!?」


 少女は言葉を溜めて、重大発表でもするかのようなテンションで話した……いやまあ、俺たちにとっては重大発表なわけだが。


「なんと!見事3000の大台、英雄級を突破した方は!特別救済処置として、私の側近になっていただきまーす!」


「え!やったあ!」


 いやいや希さん、そこまで言うってことは相当その3000が難しいってことですよ。何てったって一般人で100、こっちの世界で例えるならプロスポーツ選手が1000、その中でもギネス記録や金メダルを連発するような選手が3000ってことだ。そう簡単にいくわけがない……ただ、万が一あるとしたら……。


「おぉっと、そこの君。側近になったとたん逃げ出そうったってそうはいかないよ!」


「な……にぃ!?」


 心の中が読まれた!?


「私の魔力数はこの世界……いや、君の世界含む全世界1位といっても過言ではないからね……何てったって私の魔力は15万!君たちなんて、赤子の手をひねるよりも簡単だよ」


「な……!」


 15万!?おいおい、化け物かよ、早速チート級じゃねぇか!


「ま、でも君の言う通り。3000なんて滅多にでないから期待しない方が……って、えぇ!?」


 驚く少女に合わせてその方向を向くと、そこには希さんが既に水晶玉に触れている姿。

 そして肝心なのはその数値、水晶玉には白く薄れた文字で15000と書かれていた。


「こ、これって、3000以上ってことだよね!すごい数値だよね!」


 希さんがぴょんぴょんと跳ねている。可愛い。やっぱ天使!


「な……15000だなんて歴代2位、超々英雄級……!いや、まぁまぁ。いいでしょう、今回は大玉が来たってことで……特別に!君を私の側近にしてあげましょう!」


「やったやったぁ!良かったね!佐々木くん!」


「え……?はぁ、はい、良かった」


 え?俺も助かるの?マジ?希さんマジ天使、いや、マジ救世主!


「ちょぉぉぉぉっと待った!」


 そんな喜びも束の間、少女の大声によってすべてかき消される。


「何を勘違いしているのか知りませんが、もちろん彼にも測ってもらいますよ。たとえ英雄級が出ようと、これは供給源になるかならないかのテストなんですから」


「え!そんな!」


 そりゃあ……そうですよねぇ……。

 分かっていたとはいえ、期待した分のダメージはでかい。


「では、少年。前へ」


 その指示に従い、俺は祈るように目を瞑り、水晶玉に手を乗せる……頼む、希さんほどじゃなくていい……!頼むから、せめて3000くらい出てくれよ!俺!

 ゆっくりと目を開くと、そこには数字が浮かんでいた。


「……へ?」


 そこには、大量の0の文字。


「な、大外れ!0ですと!?前代未聞、今生きていることが信じられない!追放!こんなものは供給源にもならん!」


 マジですか。

 やっぱり人生、人間力、気迫に気力、気質ってのが大事みたいで。

 どうやら想像通りに期待外れ、俺の魔力はまさかの0で。

 兵士に囲まれ、俺はどこか知らない町へと売り飛ばされた。

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俺……実は最強でした!?系の主人公が、売られた街で無双しまくり平穏な日々を謳う話。 ~召喚された最弱は知識とスキルで英雄をも凌駕す~ ノノ @bonno_108

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