第5話 Yield
私はもう疲れたよ。
あなたと戦うのは。
あなたが今階段を昇ってくるのは聞こえてる。
なんのために来るのかも、私はもう気づいてる。
私を殺しに来るんだろ?
手に入らないものだからさ。
だけど私は逃げないよ。
逃げることに疲れたんだ。
今度は完全に白旗だ。
あなたに降参するよ。
私がどんなに逃げても、
私がどんなにおかしくなっても、
私がどんなに転覆しても、
私がどんなに醜くても、
追い続けたあなたに敬意を表し、
私は降伏する。
もうあなたはドアの前まで来たでしょ?
ドアは開けておいたよ。
でもすぐにやられるのも嫌だからさ、少しかくれんぼでもしようよ。
家も大きくないからさ、簡単には見つけられるけど。
色んなことがあったよね。
今ではなぜか懐かしい。
あなたのことは嫌いだけど。
もしも違う形で会えていたら、友達くらいなれていたかな?
一緒に出掛けたりとかして、楽しい時間過ごせたのかな?
彼氏とかは無理だけど、それぐらいならば許してやろう。
押入れの中に隠れたから、早く私を見つけに来い。
ドアが開いた音がする。
飛んでいられるのもあと少し。
羽がもがれたらもう飛べない。
優しく羽はもいでくれ。
抵抗しないんだから、それくらいのわがままは聞いてよ。
今まで散々私を困らせたのだから。
なんてそんなこと考えたら、もう
あとはその襖を開けるだけ。
それで私は地に落ちる。
短い人生だったけど、ここまで言うほど悪くない。
最後にあなたの顔を見せて。
あたしの嫌いなあなたの顔を。
なぜ襖を開けないの?
あなたの勝ちはすぐなのに。
あぁ、きっとこうだろう。
襖の前で笑ってるの?
怯える私をバカにして。
ならこっちから出てってやろう。
予定通りじゃないけれど。
少しはビックリするだろう。
見てあげるよ、あなたの醜い顔を。
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なぜあなたが死んでいるの?
あぁ、今気づいたわ。
私はゆみじゃない。
私はあなた。
あなたは私。
わたしはもう死んでいた。
ゆみ clara @clara10
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