希薄な人間関係を好む主人公が老人と組む。二人の出会いまでは若干、硬い印象を醸すストーリーは後半、ダイナミックに「娯楽」に切り替わります。全体を通して硬軟、押し引き、強弱、等のブレンド具合が高度で非常に魅力ある文章ともなっています。文字の密度が高くはありますが、それを感じさせない面白さ、楽しさ、スピード感があるので万人にお薦めです。
山岳文学の一峰に連なる作品。陳腐な言い種かもしれないが、なるほど、主人公は山でしか生きていけないだろう。まあ、山火事には注意した方が良いとは思う。 さておき、『敵』の雄大さに感心した。舞台は現代日本なのだろうが、古代神話さながらの迫力があった。
白鯨に似たタイトルだが、書き出しが「わたしのことはイシュマエルと呼んでくれ」ではなく「僕は友達がいない」友達がいないので名前も読んでもらえない、名無しの主人公なのだ。余計な描写はない。簡潔。ストイックな主人公。笑える。