第22話 代役は脅迫で
「さて、集まってもらったのは他でもない……夏祭りでの作戦会議のためよ」
私はそう言って、
1人目は
こちらは「佐川くんと2人になれるなら……」と、俄然やる気になってくれている。この作戦のためだと言えば、疑うことなく私の手となり足となってくれるわ。
問題があるのはもう1人の方ね。
「ど、どうしてボクがこんなこと……」
「あら、なかなか似合ってるわよ?」
彼女……と言いたいところだけれど、
さっき言ったように渉流くんを好きな女の子を探しては見たけれど見つからず、フリをしてくれる人すらいなかった。
そこで私は逆転の発想をしたわけ。それが『男なら男に触れるくらい平気でしょ』というもの。
今は試しに女装してもらっているんだけど、これが私の予想通りめちゃくちゃ可愛いのよね。女の子にしか見えないわ。
「ボクは男だよ?変なことに巻き込まないで」
「あら、その割にすんなりと着てくれたじゃない」
「そ、それは……紅葉ちゃんが言いふらすって脅してきたから……」
彼はしゅんと俯くと、スカートの裾をギュッと掴む。その姿もまさに女の子、渉流くんに捧げる生贄として申し分ないわね。
「言いふらす?何をですか?」
「ふふ、実は彼――――――」
「わーわーっ!教えないでよ!」
寧々子ちゃんに耳打ちしようとすると、千秋くんは慌てて私を止めに来る。
彼がこれほど守りたい秘密。私はそれを握っているからこそ、嫌がる彼に女装させることが出来た。
その秘密というのが、『
人のあまりいない本屋に立ち寄った時、偶然その現場を見ちゃったのよね。それ以来、千秋くんは私に刃向かえないというわけ。
今まで命令したりはしなかったけれど、
「じゃあ、作戦に参加してくれるわよね?」
「っ……わ、分かったよ……」
渋々ながら了承してくれる彼にガッツポーズをして、その日の作戦会議は終わりを迎えた。
「上手くいったら、千秋くんのためのBL小説を書いてあげるわ」
「……う、うん」
ちょっと嬉しそうな顔を見せた彼は、「またね」と小さく手を振って帰っていった。
夏祭りの当日、千秋くんが渉流くんを騙し切れるかどうかだけが残りの課題ね。
「渉流くんが千秋くんに手を出したりしたら……って、さすがにそれはないか」
その場合は千秋くんと自分は男だと打ち明けるはずだもの。まさかBL展開に流されたりなんてこと、あるはずがないわよ…………ね?
私の中で、どこか嫌な予感が当たりそうな気がしていた。まあ、あの二人がどうなろうと、私の作戦に影響はしないけど。
「よし、当日は絶対に2人きりになるわよ」
そして花火を見ながら想いを伝えるの。
お祭りムードの助けもあって、きっと一郎はいい返事をしてくれるはず。夏祭りというものには、そういう魔法があるって昔から言うもの。
「今回の作戦は他のとは違う。絶対に上手くいくわ」
私はそんな独り言を呟いて、拳を強く握りしめた。
幼馴染が小説家デビューしたけれど、主人公がどことなく俺に似ている気がしてならない プル・メープル @PURUMEPURU
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。幼馴染が小説家デビューしたけれど、主人公がどことなく俺に似ている気がしてならないの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます