第21話 時には即決も大事
お姉ちゃんからアドバイスを貰った次の日の昼休み。
「ねえ、
「そういえばもうそんな時期か。
「そ、そっかぁ……」
表面上ではウンウンと頷きつつも、私の心の中は荒れていた。渉流くんを好きな人なんているわけないじゃない!
他校ならまだありえる、けど構内での彼は女子から生ゴミのように見られている。だって、紳士的じゃない上に話も行動も下品だから。
他校に知り合いなんて居ないし、居たとしても彼の本当の姿を見せるような卑劣な真似は私にはできない。
「他には誰か連れていかないの?」
「他って言われても、誘うほど仲良くしてる奴なんて多くないからな。あいつは彼女居るし、あいつも小学生の妹と行くみたいなこと言ってたしな」
あいつが誰を指してるのかは分からないけれど、とりあえず今年は渉流くんと2人で行くということはわかった。
とりあえず、渉流くんを好きだと思っている女子さえ見つければ……ってそうじゃないわ。
よく考えてみれば、彼には以前の作戦の時に一郎を好きなことは打ち明けてある。話さえつけておけば、いいタイミングで2人っきりにしてくれるんじゃないだろうか。
そこまで考えて、私は首を横に振った。
いやいや、それじゃ渉流くんが1人になる時間が出来てしまう。人混みの中でぼっちというのは寂しいし、それを頼むのもなかなか心苦しい。
やっぱり、誰か条件に合いそうな女子を見つけておく必要が――――――――――――。
「一郎、今週末の祭り一緒に行こうぜ!」
「あれ、妹と行くんじゃなかったのか?」
「いやぁ、妹がクラスのやつに誘われたって言っててな。それが好きな男の子なんだとよ」
「それは邪魔する訳には行かないな」
「そういうわけで、渉流誘って3人で行こうぜ!」
「おう」
――――――――増えた、増えちゃったよ。
ていうか、さっき言ってた『あいつ』ってお前か!名前は確か……
私、この人と話したことないのよね。一緒に行く難易度が格段に上がったような気がするけど……。
「
「えっ?! そ、そうね、そうなるかしら……」
突然と質問に、一瞬言葉を失ってしまった。そう言えば、毎年友達と行ってるって嘘ついてるんだったわ。
一郎と行けないならって不貞腐れて、家に引きこもってるなんて言えるはずがないもの。
「お祭りでお前を見た事ないよな。誰と行くつもりなんだ?」
「そ、それは……」
誰なんて言われても、まだ目星もついていない。適当に答える訳にも行かないし……と視線だけをキョロキョロさせていたら、ふと佐川くんの後ろでこちらを見ている女子と目が合った。
私を見ていた……というよりは、佐川くんを見つめてたのかしら。どことなく羨ましそうな目をしている気がするけど、もしかして――――――――。
「そうね、あの子と行くわ」
私はそう言うと、その女子に向けて手招きをした。彼女は驚いたように戸惑っていたけれど、少しするとトコトコとこちらへ歩いてきて、私の隣に立つ。
彼女の名前は確か――――――――――。
「
「ふぇ?」
「行くわよ……ね?」
「は、はい!」
よし、これでメンバーを1人確保出来たわ。
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