第20話 恋と小説は終わらせ方が難しい
「……どうしてかしら」
私は書き終えた2巻の原稿を読み返して呟く。
今回も1巻と同じく、物語の最後に告白シーンを入れた。けれど、なぜかまた失敗させる流れにしてしまっているのだ。
小説家として、3巻へ続くことを考えれば、終わらせてしまわないことは間違いじゃない。でも、この告白はこれから私がやるつもりで考えたもので……。。
「……文字でも勇気が出ないの?」
書き直そうと思って一度消してみても、また同じものを書いてしまう。どう足掻いても
青葉は私自身、
同じ道を歩ませ、同じ未来へ向かおうとしているのに、先行く青葉がこの調子では私もきっと失敗するしか―――――――――――。
「お困りのようだね、妹よ」
「お、お姉ちゃん?! いつの間に……」
「30分前から後ろに立ってたわ」
「……どうして気付かなかったの、私」
あまりに集中しすぎていたせいか……というか、30分前なら悩んでいる姿も全部見られてたってことよね?
私が「うわぁぁ!」と頭を抱えると、お姉ちゃんは肩をポンポンと叩きながら、「まあ、これでも食べて元気出せよ」とバリバリ君の袋を手渡してくれる。
何だかいつもとキャラが違うし、30分のせいでバリバリっていうかドロドロ君になってるよ。
「お姉ちゃん、いつもと違って気持ち悪いよ」
「ふふふ、なんとでも言いなさい。今日の私は心が広いから」
「何かいいことでもあった?」
「彼氏とチョメチョメしてきた」
「……チョメチョメ?」
なんじゃそりゃという顔をしていると、お姉ちゃんは「あんたはん、そんなことも知りまへんのか」と耳元で囁いて教えてくれる。
まあ、その後10発は急所にドラゴンクローしたことは言うまでもない。好きな人の事で悩んでいる妹の前で、さも自慢げに話すことでもないだろうに。
「それで、前回の計画も失敗したらしいわね」
「回復早くない?」
「姉は強いのよ。それより、またいい作戦思いついたんだけど聞く?」
「……ろくでもない作戦でしょ?」
「何を言うか、前回のだってあーちゃんが倒れなければ上手くいってたはずよ」
「確かに……って、どうして倒れたって知ってるの?!」
「嫌でも耳に入ってくるわよ、最近倒れること多いらしいし」
姉の言葉に、私は額に手を当てて唸った。言われてみれば、今月だけで既に3度倒れている。
おまけに全て一郎関係だ。
「ここらでドンと大きな一歩を踏み出した方がいいんじゃないかと思ったわけですよ」
お姉ちゃんはそう言うと、私の目の前に1枚のチラシを広げた。
「夏祭り……?」
「そう、大きくなってからは一郎くんと行ってなかったでしょ?」
「だって、一郎が友達と行くって言うから……」
「あーちゃんは友達じゃないんだ?」
「それは違うよ!でも、男の子の中に混ざるなんて、みんなに気を遣わせちゃうし……」
「なら、女の子も連れていけばいいのよ」
なるほど!向こうが複数人なら、こちらも複数人で行くことでバランスは取れる。
とは言っても、そう上手く乗ってくれるだろうか。夏祭りは一週間後、みんな既に予定を組んでしまっている頃なのでは……。
「お姉ちゃんにいい作戦感あると言ったでしょう?」
「な、何か方法があるの?」
「もちろんよ」
グッと親指を立てた姉は、どこか誇らしげな顔で言った。
「一郎くんと一緒に行く男の子たちを調べるの。彼らを好きそうな女の子と一緒に行けば、断られる心配はないわ」
「なるほど……!」
お姉ちゃんはこの作戦をこう名付けた。
『夏祭り合コン大作戦』
ここだけは納得できないけど、作戦自体は上手く行きそうだ。3巻のストーリーは夏祭り編に決定ね。
告白シーンのことは……また後で落ち着いて考えることにしよう。
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