銀河英雄伝説(田中芳樹さん)のパロディー

紗里菜

第1話 宿題

 この話は平和協定が結ばれてから数年後の世界である。

       ※★※★※★※

 ヤン・ウェンリーの家のキッチンで、人の話し声が聞こえませんか?

 多分この声はユリアン・ミンツとヤンの妻のフレデリカ・グリーンヒルに違いありません。


 一体二人は何を話しているのでしょうか?

 二人の会話に、耳を傾けて見ましょうか。

       ※★※★※★※

「上手くできましたね。これならヤン(元)提督も喜んでくれますよ」

 そう言いユリアン・ミンツは微笑んだ。

「ありがとう」

 嬉しそうな顔をして、お礼を言っているのはフレデリカ。

 フレデリカはまるで壊れ物でも扱うかのように、料理を大事に抱えて持っていく。

       ※★※★※★※

 さて、一方のヤンはその頃自室で、山積みの本に囲まれて昼寝の真っ最中。


 人の来る気配がして慌てて目覚めるヤン。


 軍人の頃の癖が抜けていないと苦笑いしていると、フレデリカが料理を持ってやって来た。


 「ユリアンに教わって作って見たので一口食べて見て下さいませんか?」


 顔を赤らめながらフレデリカは言った。


 正直言うとヤンはお腹が空いてなかったが、一生懸命作ってくれた妻の好意を無にするのは忍びなくって、フォークを手に取った。


 フレデリカは固唾を飲んでヤンの食べるのを見守っている。


 「おいしい」


 ヤンは叫んだ。


 「私、昔からサンドイッチとかの挟むだけの料理は得意ですから」と以前ヤンと交わしたやり取りを思い出しながら言うフレデリカ。


 「そういえば以前二人でそういう会話したっけな」


 懐かしそうな顔をするヤン。


 直にフレデリカの瞳が寂しそうなことに気付いて、「そこのポテトも上手いなぁー」と気の利いたことをいうヤン。


 「それはユリアンの作ってくれた物なんです」と益々寂しそうな顔をするフレデリカ。


「……」


何も言う事の浮かばないヤン。


言った言葉はもう取り消せないのだから、何とかこの場を丸く押さえなければと思うものの、前よりは上達したと言ってもフレデリカは喜ばないだろうしと思案するものの答えが出て来ない。


きちんと妻を喜ばせる言葉を用意して置かなければとブランデー入り紅茶を飲みながらヤンは考えていたし、フレデリカも困っている夫の顔を見ながらもっと料理を頑張ってこの人を困らせないようにしょうと胸に誓っていた。

      おしまい





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