文学理論その9 タイトルと助詞 B&Bより

 映画や小説のタイトルには助詞を含むものが多い。

 特に格助詞"の"を使った(連体修飾語的用法)ものが多い。

e.g. 『風ナウシカ』,『となりトトロ』,『天空城ラピュタ』,

『火垂る墓』,『魔女宅急便』,『紅豚』,『千と千尋神隠し』,

『猫恩返し』,『ハウル動く城』,『借りぐらしアリエッティ』,

『崖ポニョ』,『思い出マーニー』,『かぐや姫物語』等々。

*『ものけ姫』の「ものけ」は助詞"の"を含む複合語なので、厳密にはタイトル『もののけ姫』に格助詞は使われていないかも。


●タイトル内の助詞を変えるだけで、ストーリーやテーマは大きく変わる。


『美女で野獣 Beauty but Beast』:

  ベル(美女と野獣のヒロイン)は美女だが実は野獣だった。


『美女が野獣 the Beauty is the Beast』:

  実はベルのほうが野獣(王子)より野獣的だった。


『美女は野獣 Beauty is Beast』:

  美女は肉食系といった一般論がテーマの物語。


『美女も野獣 Beauty also Beast』(the Beauty is also a beast):

  実はベルも野獣(王子)と同じく野獣だったという素敵なストーリ。


『美女の野獣 Beauty's Beast』:

  野獣(王子)はベルの所有物となりました。

  多くの男性結婚経験者が共感する残念な物語。


『美女に野獣 Beast for the Beauty』:

  野獣をプレゼントされて喜ぶヒロインの物語。


『美女へ野獣 Beast to the Beauty』:

  美女への刺客として野獣を差し向けるというアクション劇。


『美女か野獣 Beauty or Beast』:

  僕は美女の方が好き。


『美女より野獣 Prefer the Beast to the Beauty』:

  『Beauty or Beast』の続編。女性観客向きの作品。


『美女な野獣 Beast like Beauty』:

  野獣は雌で、野獣の仲間内なかまうちでは美女だったという物語。


『美女よ野獣!Beauty, You are the Beast!』:

  ("よ"は終助詞) サブタイトルは「君は野獣のように美しい」


『美女まで野獣 Even beautiful Beasts』:

  全員、残らず野獣。例え美女であろうが野獣。


『美女ほど野獣  The more Beauty the more Beast』:

 (The more Beautiful she is, the more Beastly she is)

  美女の条件は野性的なことといったテーマの作品。

  ミスコンで上位になりたければ野獣になりなさい…みたいな話。


『美女だけ野獣  Only Beauty is Beast』:

  登場人物の中では美女ひとりだけが野獣。


●因みに、他の語句を変え、新しい物語を創った例を以下に示す。


『美女と野球 Beauty and Baseball 』(またはPlay Baseball with the Beauty)

  美女と一緒に野球観戦をする、または野球をする。といったたりな話。

  『美女と野球拳』なら観てみたいかも。


『美女と野牛 Beauty and the Buffalo』:

   "野獣"をバッファローに特定した物語。


『美女と柳生やぎゅう Beauty and Yagyu clan』:

  十兵衛じゅうべいさんとか宗矩むねのりさんとかが美女と共に活躍する時代劇。


『ビジョンと野獣 Vision and the Beast』:

  野生動物の未来像を描くドキュメンタリーだと思います。



*美女と野獣 Beauty and the Beast ヴィルヌーヴ夫人が1740年に書いた小説をボーモン夫人が改作して1756年に出版した童話。1991年ウォルト・ディズニー制作のアニメーション映画が有名。エマ・エマワトソン主演の実写映画も。


*助詞:体言・用言・助動詞などについて、その語と他の語との関係を示し、あるいは陳述に一定の意味を添え、または陳述する語。活用しない。(広辞苑)

格助詞(が,の,を,に,へ,と,より,で,や,から)

係助詞(は,も)

接続助詞(と,も,て)

副助詞(まで,だけ,ほど)

終助詞(か,な,の,ぞ,よ)…などと分類される。


以上、「ギャグ問のすすめ」、打ち止めです。

読んで下さったみなさま、斯様かような無駄話のために貴重なお時間を頂き、すみませんでした。

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講義録「ギャグ問のすゝめ」 Mondyon Nohant 紋屋ノアン @mtake

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