第4話 新しい生活と友人(放課後)
昼休みを終え、午後の授業を受けていた。と言っても、オリエンテーションをするだけで授業らしい授業はなかった。ぼーっと先生の話を聞いているだけの時間は早くすぎるもので、気付けば放課後になっていた。放課後は部活の見学がある。部活の見学は2日日程で行われる。1日目は純粋な見学があり、2日目は体験入部となっている。体験入部のこともあるので瀬戸内と一緒に行くべく声をかけることにした。
「瀬戸内、バスケ部の見学行かないか?」
なんも前触れもなく声をかけられて驚いたのだろうか。ビクッとしてこちらに目を向けた。
「いきなり声をかけないでくれよ、びっくりするじゃないか…」
それは申し訳ないな…。
「それは悪かった。それで、時間があるなら一緒に行かないか?」
改めて誘うと、間髪入れずに返答してくれた。
「うん、いいよ。僕も行こうと思っていたし」
「サンキュー。じゃ、行くか」
そう言うと瀬戸内は首を縦に振り、身支度を始めた。それにならい、俺も身支度を始める。すると、あの元気で溢れてる声が俺たちに飛んできた。
「やっほー!おふたりさん!さっきぶりだね!部活の見学でも行くの?」
そこにはカバンを持った渡辺と立花がいた。
「あぁ、今から瀬戸内と行くつもりだ」
横にいた瀬戸内を横目で見ながらそう伝えた。
「そうなんだ!全国経験者が2人だし、手厚く歓迎されそうだね!」
あはは、と笑いながら茶化してくる渡辺。それを無視し質問する。
「2人は部活の剣が行かないのか?」
渡辺に聞いたつもりだったが、意外にも立花が答えてくれた。
「うん、今から行こうと思ってたの。そしたら優ちゃんが2人のところに行ったから」
なるほど、つまり立花は振り回されているんだな。大丈夫かこいつ…、などと思いながら、少し談笑しながら俺たちは体育館へと向かっていた。部活の見学初日はどの部活も体育館で行っている。見学とは名ばかりで、練習風景の映像を見るだけの時間だ。
「着いたね」
話しかけてるのか独り言なのか、判断がつかないが瀬戸内がボソッっと言った。続いて渡辺が笑顔で話しかけてきた。
「じゃあ、ここでお別れだね!時間が合えば一緒に帰ろうね!」
言い終わってすぐに「ばいばーい!」と言い残して足早に行ってしまった。
「行ったね…」
「行ったな…」
嵐の如く突然現れ、突然消えた渡辺と立花。まじでなんだったんだ…。
「とりあえず、僕たちも行こうか」
冷静になった瀬戸内に言われ、ハッと我に帰る。
「そうだな、俺たちも行くか」
俺の言葉に瀬戸内は頷き、2人でバスケ部のブースに向かう。どの部活も見学者が多い。それもそうだ。どの部活も全国レベルで有名だし、実力も高い。運動部はプロになった人だっている。見学者が殺到するのも頷ける。
(他の部活は人がたくさんいるが、やけに少ないところがあるな…)
さっきも言った通り、どの部活も見学者が殺到している。だが、一際見学者が少ないブースがある。嫌な予感がしてきた…。
「なぁ、瀬戸内。バスケ部のブースってあれじゃないか…?」
恐る恐る見学者の少ないブースを指さす。すると、瀬戸内も武が悪そうに返事をした。
「多分、そうじゃないかな…。全体を見てもバスケ部のブースはなかったし」
嫌な予感が的中してしまった。大会の結果を聞いて半ば予想はしていたが、まさかこんなにも人がいないとは思っていなかった。
「と、とりあえず行ってみようよ。もしかしたら人混みで見えてないのかもしれないし」
瀬戸内が苦笑いを浮かべながら言う。人混みで見えていないことを祈りながらブースへ向かう。一歩歩く度にブースへと近づく。目視できる距離なので然程遠くない。冷や汗をかきながら前へ前へ進んでいく。そしてとうとうブースの前に着いてしまった。予想通り、と言っては申し訳ないが、見学者は俺たち以外にはいなかった。目の前の現実に耐えれなかったのか、瀬戸内がコソコソ話始めた。
「ま、まさか僕たち以外いないとは思わなかった…。大丈夫なのかな、バスケ部…」
そう思うのも無理はない。だが、まだ希望はあるのだ。
「まぁ、見学に来なくても入部はできるし、来てないだけで入部者はもっといるはずだ」
「そ、そうだよね。だ、大丈夫だよね…」
などと話していると、バスケ部の先輩らしき人から話しかけられた。
「ん?見学者かい?」
優しそうな先輩にそう問われた。
「は、はい。バスケ部のブースってここで合ってますか?」
そう、瀬戸内が切り返した。すると先輩は表情が一気に変わり、笑顔になった。
「部長!!!久しぶりの見学者が来ました!!」
大きな声で部長に話しかける優しいい先輩。そして、俺たちに向かって、こう言ってきた。
「ささ、どうぞこちらへ!」
この時の俺はまだ気付いていなかった。この部活の異常さに…
君を好きな理由 あまみや @saba_ame
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