季節は変わり続けるが、小さな硝子玉に映る君はとても綺麗だ。
影神
小さな硝子玉
新人看護婦さん「~さん。調子はどうですか~?
おかわり、ありませんか~?
御飯美味しかったですか?
何かあったら呼んで下さいね。」
目に映る景色は人によって、
見え方や色の具合やらの、
ばらつきがあったりするけど、
場合によれば、
存在すらも異なるのだろうか。
"とても綺麗だ。"
僕はいつからか彼女の虜になってしまった。
何故こうなったのか、
どうしてそこに居るのか、
どうゆう構造なのか、
僕には何もわからない。
"ただ、彼女はこの小さな硝子玉にしか映らないようだ。"
声を出そうにもそれは口に出す前にかき消され、
僕の腕では彼女の世界に届くはずもないだろう。
ただ、過ぎ去る時間と共に彼女との季節を過ごす。
ベテラン看護婦さん「~さん。体調はどう?
おかわりないかな?
お薬の時にまた来ますね。」
外の景色は時代と季節と共に変わりゆく。
だが、私の居る環境は何の代わり映えもしない。
でも退屈等はしない。
彼女を観ているだけで、それだけで、私は幸せだ。
とても、温かく、
何処か懐かしいような、
そのような感覚にも囚われそうになる。
そんな感情に捕らわれると、恥ずかしくも涙が出る。
一体どうしてこうなってしまうのか、わからない。
新人看護婦さん「~さん。調子はどうですか~?
おかわり、ありませんか~?
~さん泣いてるんですか?
何処か痛いんですか?」
ベテラン看護婦さん「~さんね、たまにそうなるのよね。
ずっと何も喋らないで、ビー玉を見つめてて。
~さんには何か見えているのかも知れないね。
まあ、あんな事故があったんじゃ、
報われないわよね、、」
新人看護婦さん「、あの事件ですか??
バスジャックの、巻き込まれたってやつの、、」
ベテラン看護婦さん「そう、、
あまり、こうゆうのしちゃいけないんだけどね、
犯人が旅行客の大型バスをジャックして、
暴走したあげく、そのまま何台か巻き込んで、
運悪くちょうど土砂崩れかなんかで、道路が使えなくて、
横転した車から引火したみたいで、そのまま、、」
院長「んんっ、、」
ベテラン看護婦さん「あぁ、あ、次の仕事が、、」
院長「、、、
もう少し、早く処置を施せたら、
助けられたのかも知れなかった、
だが、この世界では
たら。
れば。
等は無いから。
命は儚いのだよ、
少しでも私の力で誰かを救えるのなら、
医者として、冥利に尽きることはないよ。
、君も頑張ってくれ。」
新人看護婦さん「、、はい。」
ゆっくりと進んでいるようで時間は刻々と、過ぎていく。
私の見えている景色が着実に変わるように、
私の体もゆっくりとシワが増えて、
歩くのもやっととなってくる。
元新人看護婦さん「~さん。調子はどうですか?
~さんとの付き合いも長いですよね~。
私も歳をとりましてね、、
先輩も定年退職しちゃったし、、
私も後輩が出来て、なかなか手がかかりましてね、、
は~ぁ。この景色も最後ですかね。
老朽化が進んで、新しく近くに建てるそうですよ。
なんか、寂しいですよね、、」
新人看護婦さん「先輩、、すいませーん。
~さんが、、」
元新人看護婦さん「はーい。今行く。
また御飯の時に来ますね。今日はおでんですよ。」
何度目の季節だろか。
君の居る季節にはどれも花が咲いている。
春は桜。
夏は向日葵。
秋は金木犀。
冬には君の好きな黄色い水仙が。
思い返せば、君は私から離れる事はなかった。
ずっと見守るように、優しく微笑んでくれたね。
でもどうやら、
君との大切な時間とやらは待ってはくれないようだ。
呼吸が乱れ、
起きている時間が段々と、
短くなってくるのを感じるよ。
君と会えないのは寂しくて何だか心細い。
?、、
そうか、、君は、、、、
新人看護婦さん「~さん!!
すいません!誰か、、、」
元新人看護婦さん「~さん!!
大丈夫ですか、?、、、」
目映い光と共に優しくも温かい、
まるで日差しのような温もりに包まれる。
奥さん「おかえり、、」
男「ただいま。」
季節は変わり続けるが、小さな硝子玉に映る君はとても綺麗だ。 影神 @kagegami
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