第9話 IFルート🔀

 いちゑ様と僕は結ばれる運命にあった。しかし、それ以外の運命は有り得たのだろうか?

 孤独で寂しい人生しか思い浮かばない。また蜜壺の中でウジウジしてると、いちゑ様が話しかけて来る。魔女らしく水晶玉と向かい合っている。

「未来の分岐は無数で占い切れないわ。でも、過去の可能性はあるていど検証できるのよ」

「どんな可能性が有ったんでしょうねぇ~?」

「最初の分岐は、あなたが私のAVに嵌ったころね。もしも、我が母サリー黒瓜に嵌ってたとしたら?」

「いちゑママが僕のツボでしたが、サリーさんにも心惹かれるものありましたね」

「そうなると私の替りにサリー黒瓜が一九九九年七月の満月の晩にやってくるの。母も経験豊富な床上手だから、魔王ちゃまをメロメロしてたでしょうね。……うふふ、ぁあ面白い」

「ナニが面白いんですか?」

「もしも、母と結ばれるとね、猿聞君が目の前で大好きなママを寝取られちゃうのよ。猿聞君は物凄く嫉妬するのね。それで魔王ちゃまは、母を猿聞君とシェアするのよね」

「もしかしてDPですか?」

「そうよ。誰かと私をシェアしてみたい?」

「したいけど絶対に嫌ですね。でも、自分の分身が出来たら……」

「それが出来たら、やってみましょうね」

「ぇへ」

「でも母ルートも、結構グッドエンディングみたいね。まぁ私がベストエンディングでしょ?」

「はい、他の分岐もあるんですか?」

「次はね。黒瓜荘に越してきてからね。ルートは二つあるわ。猩子とお婆様ね」


「猩子さんとは、どうなんでしょうね」

「魔王ちゃまって猩子ちゃんのこと、それほど関心が無いわよね」

「ぃやぁ……その」

「そんなに気を使わなくても好いわよ。猩子ちゃんも、あなたに関心あった訳じゃないわ。もしも、魔王ちゃまが猩子ちゃんに惚れた場合!?」

「惚れた場合!?……」

「猩子ちゃんは、今まさに遊び盛りね。魔王ちゃまのこと放っといて男漁りに夢中ね。浮気しまくりよ。もしも魔王ちゃまの寝取られ耐性と適性高ければ、まぁまぁのグッドエンディングね。でも、魔王ちゃまは欲張りで独占欲強いもんね。疎外感で傷ついて暴走して世界を滅ぼしそうね。もうバットどころかワーストエンディングね」


「お婆様の場合はどうなんでしょう?」

「魔王ちゃま、結構お気に入りよね」

「否定はできませんね」

「見た目はアラフィフの美魔女ですものね。黒瓜荘に越してから、僅かなきっかけで、お婆様に惚れる可能性はあったわね」

「きっかけって?」

「例えば、浴場でお婆様の裸を見て欲情するとかね」

「実は風呂場で裸になってるの見ちゃいました」

「それで勃っちゃったんでしょ?」

「は、はい……」

「でも、魔王ちゃまはシャイで奥手だから逃げちゃったのよね」

「まるで見て来たかのように……」

「水晶で丸見えですもの。このIFルートは脈が太かったわね」


 あの時の状況が頭に浮かぶ。黒瓜荘に越してきた頃である。あの日は暑かった。脱衣場に入ると誰も使ってないな。汗ばんだので水浴びでもしよう。さっさと服を脱いで、浴室の引き戸を開けたっ!

 思わす尻尾が勃ってしまう。先走る。誰かいる気配なんかなかったぞ!

 少し弛んでるけど美しいお尻様に出迎えられた。大家のオバちゃんだ。今気が付いた。すごい美熟女だったんだな。

「ご、ごめんなさい。態とじゃないです。失礼します」

「お待ちになって、こっちいらっしゃい。背中流してあげるわ」

 お言葉に甘えるというか、言霊に引き寄せられてしまった。ヤバいな勃ってるのバレそう。


「私みたいな、お婆さんに興奮してるの?」

「す、すみません」

「好いのよ。男の人だから仕方ないわね」

 白魚の指で現れながら臨界点を超えてしまった。目を細めて微笑んでいる。年取ってても美人は美人だな。いままで気が付かなかった。何で気が付かなかったんだろう?


 それ以来、大家さんとは大の仲良しになった。朝昼晩、賄を作ってくれる。ありきたりの和食だけど、とても旨い。胃袋を掴まれてしまった。一日一日ごとに親密さも増した。やがて当たり前のように口づけを交わすようになった。筆おろしは未だだったが、毎日煩悩を祓ってくれた。

 そして、一九九九年七月の満月の晩になった。

「お誕生日祝いよ!」

 大家さんと結ばれた。内縁の夫婦の様な関係になった。僕は、家賃も払わない居候、つまり引き籠りのヒモである。毎晩毎晩愛し合った。そうして十年が過ぎた。僕は十年過ぎて四十路のオッサンになった。大家さんは十年過ぎ、見た目は四十路くらいに若返った。そして気が付くと、心地よい暗闇の中にいた。


「魔王ちゃま、お婆様と浮気したわね」

「ごめんなさい」

「私のことすっかり忘れて夢中だったわね」

「本当にごめんなさい」

 心の中で裸土下座をする。


「本気で謝らなくて好いわよ。私がお婆様役を演じてたんだし。あなたの大好きな、ろーるぷれいんぐげーむってやつね」

「ああ、だから似てたんですね」

「実際似てるわよ。お母様よりも、お婆様に似てるのよ」

「確かに面影が似てますよね」

「お婆様ルートは結構好かったでしょ?」

「いちゑママルートに次ぐ、グッドエンディングでしたね。でも、夢の中で大家さんが『上がってるから大丈夫』って言ってたんで、避妊しなかったんですけど、結局、蜜壺の中に封印されましたね」

「それは魔王ちゃまの童貞力の御利益よね。十年かけて魔王ちゃまの童貞力浴び、お婆様は若返って生理が始まったの。それで受精受胎して、魔王ちゃまの御体は心筋梗塞で死んじゃったのね」

「ところで、サリーさん、猩子さん、大家さんコースをたどって、いちゑ様コースに向かう可能性って無いんですか?」

「それでも転生後は私と結ばれたいのね。お婆様ルートだと、有り得そうね。私とお婆様で、魔王ちゃまをシェアする未来も有るかもよ?」

「ぇへへ」

「でも、私もつまみ食いするから覚悟してね」

「いえ、いちゑママ一筋を全うします」


 それにしても、大家さんコースは凄かったな。本当にHしたような臨場感が有る。未来のVRゲームでも、これは無理なんじゃないか?

 十月十日、蜜壺に引き籠っていた。その間、しばしば例のVRRPGで遊ばせて貰った。もう現実に戻る必要ないんじゃね?

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愛は痴球を救う——一九九九年七の月、三〇歳童貞なので魔王になれたけど蜜壺に封淫されたケン🐶 Peeping Dom @peeping_dom

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