第22話 緊急呼び出し
猫江に連絡取っている時間もないので、とりあえずスーツに着替えて重い足取りで
ホテルのフロントに但馬守の部屋を訪ねると、どうやら会議室を貸し切って作戦本部に充てているらしい。
場所を教えてもらい、呼吸を整えてからエレベーターに乗り込むと、キャリーバッグから馬琴を摘み上げて胸の前に抱える。
「やっぱり昨日の事怒ってるのかなぁ……」
『そりゃ怒ってはおるだろうが、わざわざそんな事でおぬしを呼び出しはせぬじゃろう』
「ほんと? 切腹しろとか言われない??」
『おぬし……、もしやワシを盾にするつもりか?』
「……」
「こら、離さぬか!」
「馬琴ちゃん!私たちは
押し問答をしている間にエレベーターが止まり、だだっ広いホールに足を踏み入れると、目の前の扉に【柳生新陰流札幌道場】と書かれた札が堂々と掲げられている。
「行くわよ、馬琴ちゃん!失礼しま~す」
意を決した様に重厚な木目のズッシリと重いドアを開けると、中は蜂の巣をつついたような騒ぎになっていた。
部屋の奥のハイバックの高級そうな椅子に腰掛け、腕組みをしながら弟子たちに指示を出す但馬守のギラ付いた目には僅かに興奮の色が伺える。
高弟の一人を捕まえて何やら耳打ちをしていた但馬守が、入り口でキョロキョロと周囲を見回しているみどりに気付いて手招きをした。
「昨日は大変申し訳ございませんでした!!猫江になり代わりお詫び申し上げます!!」
前に抱えた馬琴と共に深々と頭を下げる。
「もう良い、あ奴の事は思い出させるな」
苦虫を噛み潰した様な顔で苦笑した但馬守は、顎をしゃくってみどりに着座を促した。
「失礼します」
椅子に腰掛けたみどりとその膝の上に座った馬琴を交互に見ながら、但馬守が口を開く。
「そなたらに来てもらったのは、犬江親兵衛の事じゃ」
「犬江の事ですか?」
「左様、密偵を進めておった弟子らが犬江のアジトを掴んだのじゃ。しかも、犬江めが今日は女の部屋ではなくそのアジトにおるという」
「ほんとですか!?」
「うむ、手下を集めて物取りの相談をするらしいのじゃ、まさに一網打尽にする好機、ワシらは今晩犬江のアジトに突入する故、首尾よう運べば明日には東京に戻れよう」
「わぁ、それは良かったです!」
「一応知らせておこうと思うての、犬江の方カタが付けばそなたらも猫江なんぞに振り回されずとも良かろう」
「え、えぇ、それはまぁ……」
確かに猫江に振り回されるのはもう沢山だが、その場合自分の任務の評価はどうなるのだろう?
八犬士は犬江だけではないのだから、今後の事を考えると猫江は連れ帰った方がいいのか?
でも、あんなのを連れ帰ったら課長の山下にもちょっかい出して揶揄うに決まっているし、下手したら中池にまでちょっかい出すかもしれない。
それに……
「なんじゃ、気になる事でもあるのか?」
「あ、あの、アジトの情報はどこから?」
「なんじゃ左様な事か?こちらの心配はせずとも良い、些細は申せぬが信頼できる筋の情報じゃ」
「そ、そうですか」
煮え切らない返事を返すみどりの背後から興奮し切った声が飛び込む。
「但馬守さま、今一度
振り返ると先程耳打ちをされていた高弟が、アジトの見取り図の様な物を持って立っている。
「うむ、全員集まれ!」
但馬守は立ち上がって弟子たちに号令をかけると、みどりに向けて
「そういう訳じゃ、ワシらはこれから手筈を確認したらすぐに行動に移る。
結果はまた連絡する故、そなたは戻って東京に帰る準備でもしておくが良い」
『東京八猫伝!(=^・^=)!』~せっかく復活したのに猫探しの旅ですか!?~ J・P・シュライン @J_P_Shrine
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