想像力に乏しい自分なので転生ものを読むのをこれまでためらっていました……が、これを読んだ途端、「何、この面白さ!」となりました。
何せ、ある時突然、自分が観衆の見守るなか、カクテルライトを浴びたグラウンドのピッチャーマウンドに向かっているんですから。しかも投げる球は超豪速球! 電光掲示板に160キロなんて出て、観客どよめいたりして。
夜眠るとそちらの世界へ行き、起きるとこちらの世界。しかも微妙にリンクしています。応援してくれている美人の先輩が向こうの世界では自分のファンの少年?
そして何もかもがバラ色なわけではないんですね、これが。現実の世界で取引のあるリストラ候補の中年男がこちらでは契約切られそうなベテラン選手。かと言って勝負の世界で甘い球は投げられない。
現実世界で会社は買収されそうだけど、夢の世界の球団もそうそうタウンの後澤社長に身売りされるかもしれなくって……。
ハチャメチャコメディでなく、ほんのりほろ苦いのがツボにはまっています。そう、野球って活躍を追うばかりのものでなく、新人が父親みたいな選手と対戦したり、活躍で脚光を浴びる選手の影でひっそり引退していく地味な野球人生もあり、悲喜こもごもなスポーツなんだなあ、そんな事に改めて気づいたり。配球等の細かい説明もあり、スポーツ小説としても読み応えあります。
あ、あと章のタイトルもすごくかっこいいです!
大阪やさいたまのある場所はどうなってるか、それは読んでのお楽しみ。
これを読まないと勿体ないかも。